002
金曜日、仕事が終わって、待ち合わせの駅に着くと、
「こんばんは」女性に声を掛けれた。
「どうも」
「桐谷美樹です」
彼女は迷いもなく、俺に話しかけてくれた。合コンの時にいたっけと思わされるぐらい爽やかで綺麗な人だった。佐紀の会社の先輩だとは聞いているそれ以上のことはよく知らない。
「大丈夫ですか?」
「えっ、ごめんなさい」
やばかった。少しボケっとそしてしまっていた。
「なんで、謝るんですか?」と彼女が笑う。
照れ臭くて、笑うしかなかった。
「あの店、予約したんで、入りましょう」
すでに、彼女は駅前のビルにある店を予約していてくれた。その時、少し、引っかかる部分があった。
「ありがとう」
そう言って、彼女に後を付いて店に行くことになった。カジュアルなテイストのお店だった。
席に案内されて、席に着くと「何、食べますか?ここのお肉料が本当に美味しいんですよね」やっぱり、彼女は親切だけど、何かが違う。
「そうなんですか。よく来るんですか?」
「まあ、女友達と」
何のための見栄なんだろう。たぶん、ほとんど男と来ていたのだろう。
「そんなんですか」
そうかわすのが鉄則だ。好きでもない人の子をわざわざ詮索することも必要性はない。別にここで嘘とついたとして、俺は困ることはない。彼女は嘘が下手だ。
彼女がメニューと見ている視線を確認する。
「じゃあ、この1番人気の料理にしようかな。」
「さすがですね」
それを選んでほしかったでしょうと、思わせる態度だ。
当たり障りのない態度をして、相手を安心させる。これも営業で身に着けたものかもれない。
もっと、下手くそに生きれれば楽なのかもしれないが、こうすれば相手が喜ぶというものを身についてしまっている。
喜ばしたくて、喜ばしてるわけじゃない。仕事で身についてものでしかない。仕事がそうであれば、プライベートまで侵食されていく。
佐紀のことが好きだが、きっと俺には興味がないことも知っている。このまま、次に進めるのか。佐紀に告白したことはあるが「冗談でしょ」と言われてから、それ以上は何もできていない。
「そういえば、話ってなんですか」
本題を忘れていた。
「あっ、島崎さんのことで、お礼がしたくて」
「俺、何もしてませんよ」
「でも、間接的には助けてもらいました。」
何のためなのだろう。それとも、今回は俺を狙ってきたのだろうか。俺は彼女を騙してお金を奪うことはないし、彼女を好きになるとは思わない。
「今回はお礼ということで、食事を楽しんでくれませんか?」
彼女はそう言って、笑った。
「そいうことで、分かりました」
俺もそれ以上に、気になることはないので、何も言えなかった。
確かに肉料理が美味しかったし、女性と他愛もない話ができたのは久しぶりかもしれない。彼女と笑顔で食べてくれたことは嬉しかった。
「ここは私が払います」
その店のお金を彼女が払おうとしたときは、驚いてしまった。
「いやー、俺も男だし…」
そう言うと、彼女は少し戸惑っていた。
「じゃあ割り勘で、少し多めに出してもらっていいですか」
「わかりました」
彼女は笑顔に戻った。
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