王宮での値段の良いバイトの正体は、冷徹陛下の花嫁役でした...

@noreadyname

第1話 怪しげなバイトの正体とは...

ーーーーここは東の国ヒーストリアの王宮の奥の奥ーーーー。


「ちょっと待ってください!!!そんなこと聞いてないんですが!?」


静かな空間の中で、女性の声が響き渡る。


(ーーーー夢なら早く覚めて...)


さっきからそうずっと願っているが全く覚める気配がない。


むしろ国王の第一補佐官の『琉 按司(る・あじ)という、体つきの線は細く、メガネをかけた男は、自らの眼鏡をクイ、と人差し指を当ててかけ直しながら、話を淡々と進める。


「ですから、先程から申した通り、貴女にはここで働いて頂きたいのです。」


「宜しいですか?李 零(リ・レイ)殿。『国王の偽物の花嫁』としてーーーー。」


◆ ◆ ◆


ーーーーそれから数日...


零はここ、ヒーストリアの後宮で案内された部屋の椅子にポツンと1人座り考え込む。


(どうしよう...大変なことになってしまった...)


後宮というのは王宮の中でも区分された女の花園ーーーー。


男子の立ち入りは一切禁じられており、入れるのは国王とその血縁者、後は『宦官』という大事なアレを失った元男性のみである。


零は、父親からとても割の良いバイトがあると聞いてここに来たのだ...が、


(王宮の掃除とか、そんな仕事かと思ったらまさかの花嫁!?意味が分からないわよ!?)


零は怪しいとはおもったが、町娘が王宮でする事といえば、掃除。


だから零は、掃除で稼げる上手い話と思ったが、現実は違った。


現実は花嫁役ーーーー。


按司が言うには、この国の国王は全く妃を娶るつもりが全くないが、縁談が後を絶たないため、その縁談よけとしてのこのバイトだと言う。


(しかも...)と零は思う。


ーーーーしかも、相手があの冷酷と有名な『百 珠羅(びゃく しゅら)』陛下なんて聞いてないんですが...


珠羅は、国中の女性から美しいと思われているが、反面、冷徹なことでも知られている。


例えば挨拶をしなかったら牢入りとか、起床時間までに起きれなければ即刻重罰が与えられるとか、そんな彼の噂は後を絶たない。


更にはこの後宮は常に静かすぎて逆に落ち着かず、広すぎて移動にも時間がかかり効率が悪い。


(ここにいる人達も皆良い人達でいいと思うけどいつ、ヘマをして無礼だ!!と言って殺されるのか分からない...)


そうもんもんとしばらく考えていていると零は、拳をぎゅっと強く握り、椅子から立ち上がる。


(よし、やっぱり辞めるって言ってこよう!!)


と部屋のドアに手をかけた時、


(けど、今更辞めるって言った方が危ないんじゃないかしら...?)


ゾッと零の血の気が引き、もう一度椅子に座って考えてみる。


(だ、大丈夫よね?だって仮にも国王だし!!)


そう思ってみるが、今まで町で聞いてきた噂がどんどん脳内で再生されていく。


(よし、やっぱりーーーー!!)


と、席を立ち出口のドアへと手をかけるが、どうしても言ったあとの陛下の反応が恐ろしく、


(どうしても私には無理だわ...!!)


と椅子へと戻って座ってしまう。そんなことを更に2、3度繰り返しているその時だった。


背後からクスッと笑い声が聞こえ、零は振り替えって目を大きく見開く。


なんとそこに立っていたのは私の麗しい偽物の婚約者、珠羅だった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

王宮での値段の良いバイトの正体は、冷徹陛下の花嫁役でした... @noreadyname

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る