第7話

 その山は、富士山にそっくりだったのです。

 そりゃあ、もう思わず涙の出てくるほど、そっくりの姿でした。ただ、大きいんです。日本の富士山と比ベると、それこそ、大人と予供ほども違うんです。八千メートル級の高山のように見えました。それでいて、その姿の美しいことといったら、本当にあの祖国の富士山そのままで、しかもはるかに大きいんですから、その風格は例えようもありませんでした。まるで、この山が正真正明のオリジナルで、日本の富士山は、ただのコピーに過ぎないかのようでした。しかも計器の針は、この山の方角をさし示して、止まっていたのです。

 そうです。私達は、とうとう探しあてたのです。あの山には、おそらくウラニウムの大鉱脈が眠っているはずでした。しかし、残念なことに、もう帰途にギリギリの食料しか残ってはいませんでした。もともと私達は、探しあてられなけれは、生きて帰ってくるつもりはありませんでしたから、無理を承知で、こんな奥地まで来てしまったんです。しかし、目的のものを探しあててしまった今、我々には、報告しなければならない、生きて帰らねばならないという義務ができてしまったのです。無線器は、盗聴の恐れがあるため使えません。今まで1キロメートル毎に置いてきた目印を頼りに、なんとしても、艦までたどりつかなければならなくなったのです。

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