第6話

 南極での探査旅行は、ひどいものでしたよ。もう、思い出すのもいやなほどです。奥地へ進むにつれて、クレバスに落ちたり、寒さに耐え切れなくなったりして、仲間は一人減り、二人減り、木の葉が散っていくように少なくなっていきました。それでも私達は、なおも奥ヘ奥ヘと、特殊な計器に導かれるままに進んで行きました。この計器っていうのも、やはり軍の研究所で開発した、当時としては全く画期的な新理論に基づいて作られた金属探知器だという話でした。最高機密ということで、私達は使い方しか教えてもらえなかったんですが、でも、今から考えると、あれはガイガーカウンターの超強力なやつだったみたいです。軍は、きっとウラニウムを探していたんでしょう。ああいった放射性元素の鉱脈は、古い安定した大陸にならあるはずですが、日本のように地殻変動の激しい新しい島では、まず大鉱脈は望めませんから。あの時、軍が戦局を一気に巻き返すとしたら、原子爆弾しかなかったでしょうね。

 そうやって、どんどんどんどん進み続けていきました。どのぐらい進んだでしょうか。とにかく、もうずっと奥地であることは、間違いありませんでしたが、突然その計器が、恐ろしいほど強烈な反応を示し始めたのです。メーターの針が、もう目盛一杯に振れていて、ブザーも狂ったように鳴っています。我々は全員、目的地ももうすぐだと、色めきたちました。そして、疲れきった体にむちうって、反応の一番強い方向に進んでいきました。

 もう夢中でした。あたりの様子などかまわずに、ただ、器械の針だけを見ながら進んでいきました。すると何時間かたった頃、突然計器の針が吹っ飛んでしまいました。あまりの反応の強さに、計器が壊れてしまったのです。

 その時でした。ふっと正気にかえった私達の目の前に、巨大な山が姿を現わしたのです。まだ、大雪原を隔てた、はるかむこうにあるとはいうものの、その姿は、私達をぼうぜんとさせました。

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