第3話

 マスターは話し始めました。

 ちょうど、戦争も終盤にむかう頃でした。もう、日増しに資源が少なくなっていって、石油も鉄も、じきに底をつくのが目にみえていた頃です。

 ある日、私は研究所の所長に呼び出されました。私は、山師のようなことをしていて、登山の経験もかなりあったので、研究所の先生の助手として、軍のために日本中の鉄鉱床や油脈のありそうなところを調査していたのです。でも、もう日本国内はあらかた堀りつくしてしまい、海外の領土はなくなっていく一方で、私は、もう軍には用のない身になったと思っていました。それで、今頃なんの用だろうと思いながら、所長室ヘ入っていきました。

 するとどうでしょう、そこには所長のほかに、軍のおえら方で、一介の研究所の職員風情がお目にかかることなど、絶対にできない方がいらっしゃいました。私は入口で、しばらくポカンとしていたのでしょう。所長が、早く入ってドアを閉めろと身振りをしているのに、なかなか気がつきませんでした。やっと、私がドアを閉めると、早速所長が話し始めました。

 「野村君(これは私の名前です)、これから話すことは、軍事上最高機密に属することだ。そこを、よく心しておいてくれたまえ。」

所長はそう言うと、その閣下にちょっとおじぎをしました。閣下はうなずくと、おもむろに立ち上がって話し始めました。

「君も知っているように、我が国の資源は底をついてきている。しかも、戦局は我が方に有利とは言えぬ。このままでは、我々は本土にまで押し戻されてしまうだろう。そうなっては、敗北も覚悟しなければなるまい。したがって我々は、ここで一気に巻き返しを計らねばならないのだ。そこで、君にそのための資源の確保をしてもらいたい。」

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