第5話 『白線流し』を旅する真一①…高山
真一は会社に有給休暇を取得し、『Go toトラベル』を使って、感染対策を万全に期して、一路岐阜県の高山へ向かった。
真一は高山には何度か旅で訪れていた。
今回高山へ向かったのは、『白線流し』を実際に行っている高校が高山にあるからだ。真一は早速、高校へ向かった。
高校の校門は閉鎖されている。校門の前を通る人に尋ねる。
真一「すいません」
男「はい」
真一「あの、ちょっとつかぬことをお尋ねしますが、『白線流し』をやっている高校というのは、こちらですか?」
男「そうです。私、こちらの高校の教師をしております。卒業する生徒が男子は学帽の白線を、女子はセーラー服のスカーフを1本に結びつけて、川へ流す儀式です。過去にテレビドラマとかでも紹介されています」
真一「そうですか…。ちょっとつかぬことをお聞きしますが、1ヶ月くらい前に、この男の子を見かけませんでしたか?」
真一はスマートフォンに保存していた高橋の顔写真を男性教諭に見せる。
男「あぁ、この方でしたら、確か『新潟から来た』って話されていました」
真一「そうですか…。あと『白線流し』のことで何か尋ねていませんでしたか?」
男「えぇ。確か『自分の大切な人にルーツを教えるんだ』って言ってましたね。それとドラマの舞台が松本だったので、松本にも訪ねたと話しておられました。それから…」
真一「それから…?」
男「男性は『このあと南町へ行く』とおっしゃってましたね」
真一「そうなんですか? 何しに南町へ行くと話していましたか?」
男「詳しくはおっしゃっていませんでした」
真一「そうですか…。あともう一つ、この男の子が話した『大切な人』というのは、何かお聞きになられていませんか?」
男「詳しくはわかりませんが、確か…恋人ではないけど『大切な人が…』と話しておられましたね」
真一「そうですか…」
真一は『白線流し』を実際にやっている川を目に焼きつけて高校を後にした。
真一は、これまで高山を旅したときの定宿の旅館へチェックインする。
仲居・田村「堀川様」
真一「田村さん」
田村「ご無沙汰しております」
真一「こちらこそ、お久しぶりです。またお世話になります」
田村「どうぞ、こちらへ」
真一は仲居の田村にフロントに案内され、チェックインを済ませ、田村に部屋を案内される。
案内された部屋で真一は、田村からお茶を供される。
田村「今回はお一人なんですね…」
真一「えぇ。ちょっと諸用で…」
田村「そうですか…。テレビでも報道されてますが、コロナの関係で宿の方もかなりお客様が減りまして…」
真一「そうですか…。少しでも早く収束すればいいですね…」
田村「そうですね…。堀川さん、今回は用事があってということでしたが、何かお探しものですか?」
真一「えぇ。実は『白線流し』のことでちょっと…」
田村「高校へは行かれましたか?」
真一「えぇ…」
田村「昔テレビドラマでもやっていましたけど、あれはどちらかといえば松本がメインの舞台で、高山がメインではなかったので…。あ、そういえばこの前『白線流し』のことで調べているお客様がお泊まりになられましてね…」
真一「え? 田村さん、その人って、この人でしたか?」
真一がスマートフォンを取り出し、高橋の顔写真を田村に見せる。
田村「えぇ、このお客様でした。なぜ堀川さんがご存知なんですか?」
真一「そうでしたか…。実は彼、今、記憶喪失になっていまして、警察が保護しているんです」
田村「えぇ…? この前こちらにいらしたときは、お元気でしたよ。『松本からこちらに来た』と」
真一「松本から高山に?」
田村「えぇ。ドラマのロケ地を見に行ったとか…おっしゃってましたよ」
真一「そうですか…。ところで彼は、新潟県の柏崎出身とうかがっています。柏崎のことで何か話していませんでしたか?」
田村「いやぁ、柏崎のことまでは…」
真一「そうですか…」
田村「ただ…」
真一「ただ…?」
田村「確か、大切な方がいらっしゃることをおっしゃってました。『どなたなのか?』というところまでは存じ上げませんが…。恋人というわけでもなさそうでしたし…」
真一「恋人ではない…? そうでしたか…」
仲居の田村と話した後、真一は旅館の屋上にある温泉を楽しむ。露天風呂に出ると、高山の街並みを180度見渡せる。真一は、露天風呂で日が暮れる高山の街並みを眺めながら、高橋の記憶喪失と『大切な人』について頭の中で考えていた。
真一(
それに、高山から南町へ向かったのはなんでや? 高山と南町を結ぶもん(もの)はないようやけどなぁ…。難儀やなぁ…。それと、恋人ではない『大切な人』って誰なんや? 追い討ちをかけるかのように記憶喪失か…。あと、身元引き受け人がおらんのも謎や。身内はおろか、親戚もおらん(いない)…て、どういうこっちゃ(どういうことだ)? 知り合いとかもおらんのか? 柏崎に何かありそうやな…。明日、柏崎に行ってみるか…)
温泉からあがり、自室に戻った真一は、夕食をとる。高山ではいつも食している『飛騨牛』を堪能した。
翌朝真一は、温泉に浸かりながら柏崎へ行く確認をしていた。
真一(身内、親戚がおらん…。なんでなんや? 恋人ではない『大切な人』…。『白線流し』…、『御守』が2個…)
(回想)
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一「まさか…」
真一は朝食をとった後、旅館をチェックアウトし、高山駅に向かった。高山からはJR高山本線に乗り、列車で富山に向かった。富山からは旧北陸本線、現在は第三セクターが運営する鉄道を利用し、柏崎へ向かった。
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