第4話 『白線流し』のドラマを見る真一と優香の夢

新型コロナウィルス感染症の感染拡大で『緊急事態宣言』が発令されていたこの頃、記憶喪失の男・高橋のことで軽く調べていた真一だったが、なぜ南町に来ていたのか、手がかりになる事柄は見つからない。警察も動いていたが進展がない状況だった。『白線流し』の本を真一は事細かく読むが、思い当たる場面がない。そこで以前、妻のみつきや共栄病院の看護助手で、真一の小学校時代の同級生・吉岡らとの話に出た『白線流し』のドラマを、スマートフォンの動画アプリで見ることにした。それには、夢の中にも出てきた高校時代に、真一が優香に聞かれたあのフレーズの事が、今になって真一の夢に出てくるからだった。




(回想・夢の中)

優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」





優香が高校時代と、最近真一が夢の中で真一に聞いてきた『白線流し』について、真一は引っかかっていた。それを払拭できれば…とも思っていたのだった。


しかし、ドラマを見ていても記憶喪失の高橋のことや、優香が真一に話したかったことが何だったのか、わからなかった。真一は、ドラマを途中で見るのをやめた。


仕方なく、真一は『白線流し』の本の続きを読んだ。しかし、本を読んでもわからなかった。



真一(どうなってんねん…)


真一は何気なくスマートフォンで『白線流し』を検索した。すると、ドラマ、書籍の他、岐阜県の高校が検索でヒットした。真一はそれを見る。


真一(ん? 高山?)


それは岐阜県高山市にある高校で卒業式の時に行われる…という記述だった。


真一(高山、松本、柏崎…、御守は松本の神社、高山の高校の『白線流し』、そして柏崎在住、身内がおらん(いない)…。それに南町におって(居て)記憶喪失に…。南町以外は点と線で繋がりそうやけど、南町はどういうことなんや…?)



その後も手が空いたときに真一は、『白線流し』の本とドラマを見てヒントを探していた。しかし、なかなか手がかりになるものが見つからない。警察も同じだった。高橋の記憶喪失は改善が見込まれない。真一が高橋と出会ってからまもなく1ヵ月が経とうとしていた頃だった。新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言が解除され、日本政府が『Go toトラベル』キャンペーンという政策を打ち出してきた頃だった。


真一は考えていた。とにかく進展がない。高橋も南町署の草野刑事の自宅で一時的に保護されているままだ。


真一(足どりを辿るしかないか…。さすがの警察も人探しでここまではせんやろし…)


真一は会社に有給休暇を取得し、南町から高山へ旅立った。そう、Gotoトラベルを使ったのだった。感染対策を万全に期して、一路高山へ向かった。

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