第2話 男との出会い
真一はその後も、高校時代の優香との夢を連日見ていた。ここ一週間は同じ夢を見ていた。
(回想・夢の中)
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「うん?」
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一「…いや。オレ、ドラマあんまり見ないからなぁ…」
優香「そっかぁ…」
真一(一体どないなってんねん(どうなっているんだ)。ここ最近、同じ夢やないか…)
そして金曜日の夜、真一とみつきが就寝する。みつきはさっさと寝ついていた。
真一(ええなぁ、みつきはさっさと寝つけて…。さて、今日も(夢を)見るんですかね…。しかし、何や引っ掛かるなぁ…)
そして、真一は夢を見た。
(夢の中)
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「うん?」
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一「…いや。オレ、ドラマあんまり見ないからなぁ…」
優香「そっかぁ…」
真一が夢から覚めて、心の中でぼやいた。
真一(またや。一体、オレ何をしたって言うんや? 優香ちゃん、どうなってんねん?)
真一が目を覚ましたのは土曜日の朝。真一は仕事が休みなので、仕事に行くみつきの弁当を作る。
みつきが仕事に出かけた後、真一が朝食をとる。朝食をとった後、ウトウトと寝てしまった。そしてまた、夢を見た。
(夢の中)
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「うん?」
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一「…いや。オレ、ドラマあんまり見ないからなぁ…」
優香「そっかぁ…」
真一が目を覚ました。
真一「……、ホンマにけったいな夢やわ。『白線流し』か…。寝てしもうてた(寝てしまっていた)…。買い物行ってこ…」
真一は車に乗って、スーパーへ買い物に出かけた。
スーパーへ向かっている途中、交差点で赤信号に引っかかる。車が停止し青信号になるのを待つ。すると、歩道から一人の若い男が真一の車に向かって助手席の窓をコンコンとノックするかのように叩いた。真一が助手席の窓を開ける。
男「すいません…」
真一「はい?」
男「助けてください」
真一「どうしたん?」
男「ボク、今どこにいるのですか?」
真一「えっ?」
男「今、どこにいるのかわからなくて…」
真一「わからん? どういうこっちゃ?」
男「記憶がないんです…」
真一「記憶がない? すぐ近くに警察があるから、行くか?」
男「お、お願いします…」
男は真一の車の助手席に乗り、真一は近くにある警察へ男を送った。
警察に到着し、男は警察官に事情を話す。
その間に真一は、仕事で顔なじみの会計課の上田と話す。
上田「堀川さん、今日は何ですか?」
真一「あの、この男の子、すぐ近くで『記憶がない』ってボクに助けを求めてきたので…」
上田「そうですか…。記憶がない…か」
真一「記憶喪失みたいです」
上田「そうですか…」
その頃、男と警察官がやりとりしている。
警察官「名前は?」
男「わかりません…」
警察官「わからん? 住所は?」
男「わかりません…」
警察官「細かい住所やなくても、例えば京都の人間とか、わからんかなぁ?」
男「…すいません、全然わかりません」
警察官「わからん…か」
上田「どないや?」
警察官「全くあきまへん。自分の名前もどこから来たのかも記憶がないんです」
上田「うーん…」
警察官「身分証明になる
上田「弱ったなぁ…。所持品は?」
警察官「着替えと財布、御守が2個、あと本ですね」
上田「御守が2個、誰かに渡すんか? 財布の中とかに身分証明になる物はなかったんか?」
警察官「ありません」
上田「あんた、御守が同じものが2個あるんやけど、これは誰かに渡すんか?」
男「そうかもしれませんが、よくわかりません…」
上田「うーん…。堀川さん、どこでこの男の子を乗せましたか?」
真一「そこの交差点です。赤信号で青になるのを待ってたら、声かけられたんです」
上田「そうですか…」
警察官「その時、どんないきさつでしたか?」
真一「買い物に行く途中、交差点で赤信号で停まっていた時に、歩道から助手席の窓をコンコンとノックされて『助けてください』って声かけられたんです。それでこちらを案内したのですが…」
警察官「そうですか…。面識は?」
真一「いま初めて…」
警察官「うーん…。とりあえず保護した方がよさそうですね」
上田「そうやなぁ…。堀川さん、心当たりないんですね?」
真一「ないですね」
上田「所持品見てもらってもわからんなぁ…」
真一が男の所持品の方をチラッと見た。所持品の本を何気なく見た。裏表紙だったので、裏返して表紙を見る。
真一「ん? 『白線流し』?」
(回想・夢の中)
優香「『白線流し』っていうドラマ見たことある?」
真一(なんや、妙な話にならなんだらええねんけどなぁ(ならなかったらいいのだけどなぁ)…)
若い男は、警察署で保護されることとなった。その際、男は真一に話す。
男「あの、ワガママを言いますが、ボクがなぜここにいるのか知りたいのです」
真一「それは警察の方で取り合ってもらえんのかなぁ…」
男「………」
真一「あの、所持品の本はなぜ持ってたの?」
男「……記憶があやふやなんですが、誰かに言われて本を見て、それで何かを…」
警察署「南町に住んでるの?」
男「住んでいません。何かをしにこちらに来たのですが、それが全く記憶になくて…」
上田「堀川さん」
真一「はい」
上田「男の子は
真一「は、はぁ…。しかし情報言うても…」
上田「些細なことでも結構ですので、情報提供いただければと思います」
真一「わかりました…」
真一は困惑気味に警察署を後にした。
真一はようやく買い物に行く。買い物に行く道中でも真一はボヤいていた。
真一「記憶喪失の男…、『白線流し』…、ここ最近ホンマにどうなってんねん。御守も持ってたなぁ。確か同じものが2個…。誰かに渡すんやろか…。そうやなかったら、同じもの2個も持ってへんしなぁ…」
真一はスーパーで買い物をしながらも、男の子のことを少し考えていた。
その夜、みつきが仕事から戻り、真一と一緒に風呂に入り、夕食を食べ終えたあと話した。
真一「なぁ、みつき」
みつき「何?」
真一「昔なぁ、『白線流し』っていうドラマって見てたか?」
みつき「えらい昔のドラマやなぁ…。確か私が短大に行ってた時やったなぁ。見てたで。どうしたん?」
真一「そんなに有名なんか?」
みつき「そうやなぁ。どうしたん?」
真一「いや、この前から行くとこ行くとこで『白線流し』の話題が出てくるから、『どないなってんねん(どうなってるんだ)?』って…。それでオレ、高校時代はドラマなんて見たことないから…」
みつき「あ、そう。いまコロナ禍ってこともあるし、動画とかDVDレンタルとかあるから、この際見たら?」
真一「うん…」
真一は、みつきに促されて『白線流し』の作品を見ることにした。
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