花嫁男子

ジュン

第1話

彼女は言った。

「大学はなに学科に進学するの?」

「家政学科に進みたいんだけど、全部、女子大なんだよな」

「男で家政学科志望って珍しい」

「そうだな。でも、昨今、男女の性別分業意識は、柔軟なものになってきてる」

「そうね」

僕は聞いた。

「きみはなに学科に進学する予定?」

「無難だけど、経済学科」

「女性の社会進出は当たり前のものになったね」

「男性の家事・育児の協力もだんだん浸透してきてる」

「僕が思うに、家政学、最近じゃ生活科学とか生活学って、学際性が高いし、立派な学問だと思うんだ」

「そうね。でも、家政、あるいは、家事は、理論的な学習では実効性がないわ。実践しなきゃ。それも一生」

「そうだね。つい最近まで、女性が無償労働でそれを担ってきたんだよな」

「そうね」

「きみが経済学科を卒業して勤め人になったとき……僕はきみにプロポーズするよ。きみを補佐する側にまわりたい」

「……そう……」

「僕はきみを幸せにしたい。けれど、『縁の下の力持ち』でいたいんだ」

「そうなんだ……なぜ、家事・育児が好きなの?」

「僕は何事も『基礎』を大事にしたいからさ」

「でも、家政学って、女子大しかないんでしょう?どうやって勉強するの?」

「教職員養成課程で、家庭科があったと思う。そこで、学習しようかと」

「そうか」

「僕が初志貫徹したら、きみを迎えるための『花嫁修行』を完遂してみせるよ」

「ありがとう!でも、夜の営みは「男」に豹変するんじゃないかしら(笑)」

「ははは(笑)。いやなんとも参ったなあ」

「わたし、思うんだけど、男女平等という理念は、男性が女性の世界を知り、女性が男性の世界を知ることで、現実味を帯びてくると思うの」

「いや、まったく同感だ!」


終わり

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花嫁男子 ジュン @mizukubo

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