18 光闇の世界 ナナ編

 「何?」

 玄関のドアが開いて、ユメがとぼけた顔が現れた。ナナとジュオンに付き添ってもらって、ユメの家をやって来た。どうしても、リリーのことが気になった。ママにもパパにも、まだ気づかれていないと思う。でも少し心配そうに、ナナの様子を見ている気がした。たぶん、視界が色が戻っているかを知りたいのだろう。でも何も言えていない。でも、1人でどう調べていいのか分からないし、ママやパパに聞くのも怖くて、ユメに聞きに来ることにした。その前にジュオンに相談した。そしたら、一緒に来てくれることになった。なぜか、ジュオンに確認するのがどこか、気が引けてしまっていた。

「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど」

 言葉を詰まらせて、ナナは言った。

「リリーのこと?」

 やっぱり、どこかバレていた。ユメはここ最近、モントとはいないようだった。

「ああ」

 ジュオンが答えてくれた。

「中に、どうぞ」

 ユメは拒否する様子もなく家の中に、入れてくれた。ユメの部屋に通された。ベットもあるが、1人部屋と思えないくらい広かった。ナナの部屋とは大違いだった。テーブルとソファもあって、ナナとジュオンはソファに腰を掛けた。ユメは何か飲み物を持ってくると部屋を出て行った。


「ユメ、ちゃんと話してくれるかな?」

「まあ、あの子もつんけんしてるけど、いい子だろう。でもさ、なんで、うちのおばあちゃんじゃダメだったの?」

 ああ、モリンのことを忘れていた。

「そうえば、そうだったね」

 言われてみれば、モリンに聞く方がよかったような気がした。でも、ジュオンも提案してくれなかったのだけど。

「そんな困った顔しないでよ」

「なんか、ごめんなさい」

 かえって、ジュオンに気を遣わせた気がした。それに、ジュオンと話すと少しドキドキしてしまう。


部屋のドアが開いて、ユメが入ってきた。

「イチャイチャしないでね」

「してないけど」「していないよ」

 どこか、同時に言ってしまった。


 ナナとジュオンの前に、紅茶のカップをユメは置いた。テーブルの中央にクッキーが丁寧に並んで置かれた。

「だったらいいけど。でも何で、モリンに聞きに行かないの?」

 ジュオンと同じことを聞かれてしまった。

「その発想がなかっただって」

「そうなんだ。でも、もうすぐリリーは戻ってくるでしょう」

「そうなんだ。たぶん、次が最後の関門であるエモシャンに行けば、すべての欠片が集まるし」

 ナナには全く頭に入ってこない内容だった。


「もう着きそうなんじゃない。アンガームがそう言ってた。」

「アンガーム?」

「神殿の守り神だよ」

「あっ、そうなんだ。イーストアンの東にある海の上にある神殿のこと?」

「そうだよ。」

 ジュオンが隣で優しく声で言った。ナナはアンガームに会ったこともないし、神殿にも行ったことがなかった。

「ねえ、ナナって、アンガームに会ったことないと思ってるよね?」

 ユメに言われて、ナナは少し頭を回転したが、その神殿に行った記憶はない。

「当り前だろう。赤ちゃんの時なんだし」

「まあ、そうだけど。」

 ジュオンはアンガームに、ナナが会っていることを知っていたんだ。ナナはやっぱり、自分だけが何も知らない気がした。

「ナナはリリーのことを気にしない方がいいと思うよ。欠片はナナの瞳に色を取り戻すと同時に、リリーの魔法力が戻っていくことになるから」

「戻るって何?」

「欠片は色の形もなって、リリーが持つ魔法具に戻っていくんだよ。それが魔力を使う元になるんだよ。」

「ふ~ん」

 魔法具と知らないし、でもやっぱり、リリーはズルい。ナナの持っていないものを全部持っている。

「なんかショックなの?」

「別に、そんなつもりないけど」

 ユメに言われたら、リリーがナナのために欠片が集めていたと、どこかで思っていた気持ちがを打ち砕かれた気がした。

「それ以外、聞くことはない?」

「うん」

 気持ちの整理がつかない。欠片はどんな形をしてるのだろう。

「ナナ、そんなに落ち込まなくてよくない」

「そうだね」

 そんな時に頭痛がした。最悪だ。リリーが欠片を手にしたのだろう。

「ナナ、大丈夫?しっかりして」

 ジュオンの声が遠くなっていく。


 

 頭が痛い。少し目を開けると、見たことがある。病室の天井だ。でも、今までより、頭がすごく痛い。目に映る光がきつい。そして身動きが取れない。

「全部、集まっているようだよ」

「えっ、なんで、でもここ最近、何もなかったから」

「たぶん、黄色の欠片は3つで1つの欠片になるから、あまり痛みがなかったのと、黄色の色は気づきにくかったみたいね」

「そうなんだすか」

 ママとテイラ先生の会話する。

「で、数時間後にはリリーも、イーストアンに帰ってくるわよ」

「ああ、そうね。あの子のおかげだよね」

「ナナももう少し休ませて、あげましょう」

 2人が多分、病室を出て行った。リリーが帰ってくるんだと呆然を思った。そうえば、どうやって、ここまで来たのだろう。たぶんジュオンとユメによってだろうな。ナナが気を失っている間に、2人で会話したのだろうか。

 

「ねえ、大丈夫だよね」

「大丈夫でしょう」

病室のドアが開いて、男女の声がした。

「でも、これでいいんだよね」

「いいだろう。瞳が集まったことは、ナナの望んだことだろう」

「そうだけど」

 これは、ジュオンとユメの会話だ。

「それでモントは消えたって、どういうことだ」

  モントが消えた。痛い頭がさらに痛くなった気がした。

「たぶん、エモシャンの使い魔だったと思う。リリーとナナの見張り役として、イーストアンに居たんだと思う。」

 見張り役って何。どうこと、何も悪いことはしてないのに、なんで見張られないといけないのだろう。

「ユメは気づかなかったの?」

「うん、まあ...気づかなかった。」

「で、ショックを受けてんの?」

「当り前でしょう。本当に好きだったんだから」

「そう」

 ジュオンの優しい声が、ナナに言ったわけではないが少し嬉しかった。でも、なんで、ナナとリリーを見張っていたかを2人は話すことはなかった。たぶん、この2人は知っているのかもしれない。

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