12  黄色の破片①

 部屋は静まり返っていて、誰もいる気配などはしなかった。奥にある窓のカーテンが微かに歪んでいるに見えた。

「気づいた?」

 一瞬で人が現れた。女性だ。

「こんにちは、アシッドの妻ベティよ。」

 すごくウエーブの掛かった髪した、活発そうな女性が鮮やかな花柄のシャツにジーンズ姿で立っていた。。堀の深い顔をして美しい顔をしている。

「じゃあ、僕は出かけて来るよ。あとは任すよ。」

「うん、気を付けてね」

 アシッドは小屋から出て行った。


ベティがこちらを見た。

「それで、これが黄色の欠片の破片1つなんだけど、すぐには渡せないの。これからあなたに試練を与えるわ」

 黄色の小さな欠片をベティは右手で、リリーに見えるようにちらつかせいた。黄色い欠片は今までの欠片と違って3分の1のサイズなのかあまりこちらからは見なかった。それに今までと違って、光ってもいなかった。

「何をすればいいのですか?」

「買い物よ。」

 リリーは唖然として、ベティを凝視してしまった。

「まあ、買い物と言っても、バターとジャガイモだけどね」

 聞いてる限り、普通の買い物。試練とは何だろう。

「ここから、右に下って歩いていくと、大きな広場に食料品を販売している『タッド』という店があるの。そこで、買って来て。」

「それだけですか?」

「そうよ」

 ベディの顔は頬んでいるが、試練が何か分からないまま、出かけることになった。お金と、食品を入れる鞄を渡され、リリーは半信半疑のまま、買い物に出かけることになった。

「帰って来たら、ドアをノックしてね」

「わかりました」

 

 エントランスを越えた先に、上にも下にも板張りの道があった。それは木の間に建てらえてるが、どこか安定していて、魔法で造られている気がした。

 少し下った先に、大きな広場あって、人が多く賑わっていた。そこに多くの店が立ち並んでいて、買い物客で溢れていた。

 少し奥まったところに、『タッド』と書かれた看板の店があった。入ると、数人のお客さんがいた。でも、どこか少し空気が変わったような感じがした。

 入って右側に、レジが1つあって、そこに座る中年の男性が座ってた。その男性が、こちらをチラチラと見ている気がした。はやく買い物を済ませたが、ただの買い物ではない気がして、リリーはソワソワしてしまう。 

 ベティの言った試練とは何なんだろう。バターと5個入りのジャガイモを手にして、レジに向かしかなかった。これ以外に、何か試練というものがある気がしなかった。


 レジカウンターに商品を置いた。

「アイズ魔法か。」

 レジの中年の男性がボソッと言った。

「あの、試練って何ですか?」

「試練??それは知らない。ああ、でも君は候補生か。ベディの刺客だろうね。まあ、買い物を済ませるだけでいいと思うよ。試練なんて、特にないと思うよ」

 リリーはただの買い物だけで、本当に黄色の小さな欠片がもらえる気がしなった。

「買い物だけでいい」

 どこか納得できずに、言葉が漏れてしまった。

「じゃあ、僕の現者げんしゃを探してきて来てくれない?この街にいると思うから」

 リリーは何を言ってるの分からなかった

「えっ、あのゲンシャって、何ですか?」

「知らなかったの? 君みたいな魔法使いを現者と呼んで、代償を身代わりになった者を代者ダイシャと呼ぶんだよ。」

 何か見抜かれ多様な気分だ。

「なんで、私が、その、現者だと気づいたんですか?」

「さあ、勘かな。」

 どうすればいいのだろう。この依頼を受けるべきなのだろうか。リリーは迷った。

「どうやって、ですか?」

 短時間で思考を働かせた結果は断るより、断る理由が見つからなった。それに欠片の情報があるのかもしれない。

「それは君の目が教えてくれるんじゃないの? 」

 目が教えてくれるって、適当に言われてるような気がして、気が引ける。

「だから、それが分からないから聞いてるんですよ。」

 小声でげんなりした気分で言った。

「まあ、そうだろうね。でも、その方法は僕にはわからないよ。」

 分からないって、それはリリーにも分からないことなのに。

「じゃあ、あなたはどの魔法の代者なのですか?」

「タッチだよ。あとさぁ、君とそんなに長く話はできないだよね」

 男性はリリーの後ろに目を向けた。振り向くと人が並んでた。これ以上は男性を話をして、レジを待たせるわけにはいかなかった。

「あのさあ、一旦、ベティに相談してからおいで」

 もしかしたら、男性と話をすることが試練だったのかもしれない。一旦、小屋に戻って、ベティに聞くしかなかった。

「わかりました。」

 リリーはそのまま、店を出て、小屋に戻ることにした。


小屋をのノックすると、ベティが出てきた。

「お帰り。ありがとう」

ベティに、買って来たものを渡した。キッチンに物を入れて、ソファのある部屋にアイスティーを持ってきてくれた。

「あの…」

「で、トカラとは会えた?」

 当然、知らない人の名前を言われて、頭がポカンとしてしまった。

「誰ですか? その人?」

 アイスティーを口に一口含ませて、リリーはベティに聞いた。

「店の店員よ。レジに座ってなかった?」

「ああ、中年の男性のことですか?」

「そうよ。ああ、そうね。トカラの名前て言っても分からないよね。ごめなさい。」

 あの人って、トカラって名前だったんだ。

「はい、会えました。」

「そう、それはよかったわ。じゃあ、欠片の破片を渡すわね」

 ベティが魔法を唱えると、黄色の小さい欠片があらわれた。そのまま、リリーのペンダントに吸い込まれた。


「あの、あと、現者を探してほしいって言われました。ベティに相談してくれとも言われました。」

「現者を探してくれ?トカラがそう言っての? あの人って代者だったんだ。じゃあ、現者が居るってことね。」

「はい、そうだと思います。」

 ベティは少し困惑した顔をしていた。予想していなかったような顔をしていた。本当にベティは買い物だけを頼んだだけだったのかもしれない。

「そう、じゃあ、現者を探さないといけないのね。」

 ベティはどこか冴えない顔をして、困ってしまっているようだった。


<続く>

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