11 黄色の欠片

 少し、箒を飛ばした先に、木の枝で間に家のような小屋が見えた。

「もうすぐ、辿り着く。」

リールが先頭を飛んでいて、その次にリリー、その後ろにアルトが飛んでいた。


 高い木の間に家が綺麗な建っている。その中の1つの小屋の前に、リールが降下していく。リリーもそのまま降下すると、エントランスのような場所に降り立った。


「ここに、アシッドという人物が住んでいる。さっき、ジョイカームの使い魔の1人だ。」

「そもそも、使い魔って何?」

 リールはこちらを見た。

「使い魔とは、守り神と何らかの契約を結んでいる魔法使いのことよ。」

 アルトが言った。

「う~ん」

 少し、雑な説明だったが、たぶん、アルトもリールも守り神と何らかの契約を結んでいるのだろう。

「では、ドアノックするからな。」と言って、リールは小屋をノックをした。

 しばらくして、ドアが開いて、ぼさぼさな頭の中年の男性が出てきた。「ああ、入れよ」と男性に言われて、3人は部屋の中へと足を踏み入れた。中はドアと違って広かった。

「魔法で広くしているんだよ」

 リリーの考えを見透かされるように、この男性が言った。この人がアシッドだろうか。


「アシッド、ジョイカームから何か聞いてないの?」

 アルトが焦るように男性に話しかけている。その後を歩いてたリリーは、アシッドであることが分かって少しほっとした。

「お前の罰って、ただ親に怒られるだけだろう?」

「そうだけど、なんか最近、外出ばっかりしてるから、ちょっとね」

「でも、すぐには欠片は見つからないだろう?」

「なんで?」

「ああ、今までは欠片が1つの形だっただろうが、黄色の欠片は3つで1つの形になる。」

「えっ!?」

 なぜか、リリーではなく、アルトが驚いている。

「だから、落第者になるんだよ。真面目に欠片を集めないからな」

「だって、必要な魔法は使えるし。」

 2人の会話がさっぱりリリーには理解が出来なかった。アシッドという人の横顔が少し呆れているようにも見えた。 


「まあ、そこに座ってくれ。」

 アシッドに言われて、3人は解放感のある部屋に置かれているソファに座った。

「こちら、リリーね。で、こっちがアシッドだよ」

 リールは簡単に流れるように紹介した。

「君は候補生か。まあ、ここに何日かは滞在するといい。ただ、今回は魔法の習得もあるから、すぐにはこのノースジョイからは旅立つことはできないと思った方がいいよ」

 アシッドがそう言って、リリーの方を見た。魔法の習得って、何だろう。

「リリーの場合はアイズ魔法だ。それを習得することが最大の目的だ。それを怠ると2人のようになるぞ」

 アイズ魔法の習得って、本当に何のことを指しているのだろう。斜め横に座ってるリールも、横に座ってるアルトも不機嫌そうな顔で、アシッドの話を聞いていた。

「この2人は、魔法で欠片を集めたのだ。これは当たり前だが、段階を踏ずにという意味だ。だから、罰として、候補生のお世話をしているのだよ。まあ、3年だよな。お前たちって、何歳だっけ?」

「16だよ」

 リールが言った。

「あと、1年か!頑張れよ」

「でもね、リリーの欠片を集めることが出来たら、プレジャカームは解放とも言っているんだよね。それはなんでかは分かんないけど。でも、人を欠片にするのはやっぱり問題はありそうだけど…」

「解放って、俺もグリフカームに言われた。でも、なんでかは教えてくれなかったんだよね。まあ、俺の場合、最悪な守り神にだからな。本当のことを言っているとは限らないし。」

 リールはどうもグリフカームを嫌っているようだった。

「それは、なんでか。リリー、君は心当たりあったりするの?」

 アシッドに言われて、すぐに気づいてはいた。

「双子の姉ナナの視界に色ないのが原因でしょうか?」

「ああー」

 アシッドがどこか納得するような声でしたが、アルトとリールはどいうことか分かっていないようだった。

「どいうこと?」

 アルトが言った。

「身代わりの魔法使いだな、珍しいよ」

「身代わり?」

「ああ、君たちもあっただろう。子どもの頃に、アルトは自分の声を変えれることを知ったり、リールは人の心を操ることが出来ること知っただろう」

「だって、魔法使いだから勝手に気づくものでしょう」アルトは不機嫌そうに斜めに目を逸らしながら言っている。

「俺もそうだ。」リールも俯いている。

「でもリリーの場合は違った。双子の姉にその能力だけが伝わった。それも壊れた形でな。」

「それって、何でそんなことになるの?」アルトが言った。

「さあな。そんなに僕も詳しく何だよ。ただ、本来は双子は2人とも魔法使いとして生まれてくるのが一般的だと思われている。」

「それって、欠片が人の形であると関係あるのか?」とリールが言った。

「あるんだよね。残酷だよね。魔法使いである本人の責任ではないが、他者に身代わりにした罪として、人を欠片にして集めさせるのだ。残酷だけど」

「それって、私の責任ではないんですよね」

「そうだよ。リリーの責任ではない。ただ、双子のお姉さんに苦痛を与えたことを自ら知ることを告げている」

「なんか、残酷過ぎない」アルトの声が少し静まり返った空気の中に広がった。

「まあ、仕方がない。そいうことであれば、ジョイカームが言った使い魔は3人いる。でも今までとは違う形で現れる」

「じゃあ、グリサーストの時のように、人が消えることはないってことか」

「もう、それがあったのか?」

「ああ、はい。キルトという人物が消えました」

「あのジジイも、最初の段階で残酷なことをしたものだ」

「そうなだよな。うちのおじちゃんは、どこか残酷んだよな」

「まあ、ジジイの優しさでもあるかもな。はやく済めば、もうそれ以上のことは起きない」

 リールとアシッドの会話がリリーには分かるようで分からない内容だった。

「まあ、グリサーストは、俺のおじいちゃんであるキルトが、裏の街に魔法で造って、リリーを送り込んだんだよ」

「いつ?」

「グリフカームに会って、神殿を出た後じゃないか。いつか分からないがね」

「そうなんだ」

「で、だ。リリー、この家の中に1つ目の欠片がある。それを探してくれ」アシッドが話題を変えるように言った。

なぜか、リールとアルトは知っているような顔をしている。

「あと、リール、アルト。君たちは一旦、自分たちの街に帰りなさい」

「分かった。じゃあ、明日またに来るわ」

「そうだな」リールもアルトに同意するように言った。リリーは戸惑って、何も声が出なかった。そして、2人は小屋から出て行った。


「ここでは透視の能力を使う練習をしてほしい。で、僕はちなみにアイズの魔法は使えない。」

「じゃあ、どうやって?」

「僕の奥さんがアイズ魔法使いなんだよ。今は透明になってるけど。」

 訳が分からない。透明って、どうやって見つけるのだろう。魔法は、火と水と風しかない。


 <続く>

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