第26話 Ⅴ-2

 反転攻勢に出た連合国と帝国との間は一種の均衡状態にあった。


 しかし、先だって編成されたAチームとBチームの鬼神が帝国の量産機を1機、2機と蹴散らしていくと、均衡は崩れていく。


 首都トレッカから、少し離れた丘陵地に帝国軍の仮の本営がある。


 そこには、皇太子サ=ヴァルド、将軍ナラヌイ、第1旅団団長カラナが集まっていた。


 「A-1ではウルフすら倒せないか」


 「は、申し訳ありません」


 「ナラヌイ、カラナ魔法石を差し出せ」


 「え?」


 「お前たち将官の魔法石はV-2の予備魔法石になっている」


 「しかし、私たちの魔法石は心臓とともにあります」


 「それを出すんだよ」そう言ってサ=ヴァルドは両手をナラヌイとカラナの胸に押し当てる。


 手品のように2人の体から魔法石が抜き取られる。


 それと同時に心臓も止まる。


 2人の死体を興味なさそうに見ながら、サ=ヴァルドは3個の魔法石をV-2に取り付ける。


 これでV-2の魔法石は6個(ヘキサコア)になった。


 数値は不明だが、恐るべき能力と言える。



 押し返していた連合国の鬼神があるラインで止まった。


 目の前にはV-2、黒よりも黒い死神のあだ名を持つ機体。


 あだ名の通り、鎌を持っている。


 Ⅴ-2の出現に連合国側の機体は距離を取り見守る。


 しかし、十分に距離を取っているつもりのZ-10に信じられないスピードでⅤ-2が襲い掛かる。


 僅かな時間の間に15機の連合国側の機体が撃破される。


 AチームもBチームもそれに気づいて、Ⅴ-2と対峙する。


 あまりにも禍々しいⅤ-2のシルエット。


 そして、その潜在能力の高さに連合国の司令官達も一瞬凍りつく。



 正面にウルフ、左にクラン王子、右にラスタ。後方にヴェル公女とヒナ王女という布陣で立ち向かう。


 


 まず、ウルフが突っ込み、大剣をⅤ-2に叩きこむ。


 Ⅴ-2は避けない。


 それが驚きだった。


 大剣はⅤ-2に命中するが、大したダメージは与えていないようだ。


 大剣が弾き飛ばされたところに、Ⅴ-2の鎌が走る。


 ウルフのE-1Tは左腕が切断され、胸部のステータスも50まで減少した。


 次に、F-9が両手剣の攻撃を見せる。


 この攻撃にはⅤ-2は反応し、かわしていく。


 Ⅴ-2のスピードが速すぎ、F-9では追いきれない。


 一旦、後ろへ下がる。


 次にP-4がⅤ-2と対峙する。


 紺碧の悪魔と死神の対決。


 Ⅴ-2にも少し緊張感が感じられた。

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