第22話 ダナン公国の新型


 正教会歴1315年9月


 クランダ連邦に新型機が配備されたのを見届けて、それまでクランダ連邦に駐留していた各国の鬼神はそれぞれの国へ帰って行った。


 ヴェル公女とラスタたちも、4月以来5か月ぶりに祖国ダナン公国に戻ることになった。


 ダナン公国の国民は熱狂的な歓迎をしてくれた。


 わずか2機の鬼神で決定的な戦果を上げたことに、ダナン公国の国民は自分のことのように喜んでくれた。


 

 ヴェル公女とラスタはオープンカーの馬車に乗って、首都の大通りでパレードをする。


 ヴェルは慣れているようだが、ラスタはどうもこういうものは苦手だ。


 キョロキョロとしていると、ヴェルに足をつつかれる。


 慣れない一日が終わり、ラスタとヴェルはザッカヴァーン大将と打ち合わせをする。


 現状、ダナン公国には量産機が配備されておらず、P-4とP-2しかない。


 生産が終わったD-1Tは全てクランダ連邦へ納品されて在庫もない。


 帝国への備えという点では隣国のクランダ連邦がまさに壁の役割をしているため、そう簡単に攻め込まれるとは思えないが、連合国同士で戦争が起きた場合などを考え、最低限の抑止力は必要となる。


 そこで、鹵獲したL-5をベースにターボ改修を施したL-5Tを15機ほど生産することになった。


 適正50、相性値0.6、魔法石1(1.7)の場合総合能力51である。


 L-5の特性であった、相性値の良さとターボを組み合わせた、量産機の名機と言える。


 パラメーター配分は、パワー1.2:スピード1:耐久力1


パワー 19.12

スピード 15.93

耐久力 15.93


 となる。


L-5Tは順調にいけば年内には配備が終わる予定だった。


 ラスタのP-4とヴェル公女のP-2Tは駐留していた時を含めて、週に3回は模擬戦を行っている。


 ヴェルの動きが速い。


 ラスタも本気を出さなければ、大きな損傷を受ける可能性もある。


 P-2Tのランスが必殺の突きを繰り出す。


 P-4は間一髪でかわすと、剣でP-2Tに斬りかかる。


 一回転して、それを避ける。


 お互いに一度距離を置いて間合いを計る。


 P-2Tが飛び込んでくる。


 P-4は避けない。


 ランスの一撃がP-4を捉えたと思った瞬間、わずかに機体をそらし、ランスをかわすと、そのままP-2Tに向けて剣を走らせる。


 寸止めで、模擬戦は終わった。


 

 「ラスタにはかなわないなあ」


 「そうですか?ヴェル様、日に日に動きが良くなっていますよ」


 「ううん、それでも、まだまだ遥かに遠いところにラスタはいるよ」


 「そう、ですか」


 「うん、でも、それでもいいかなって」


 「そうなんですね」


 「エースはあなたよ、ダナンだけじゃなくって連合国のね」


 「はい、そうあるように頑張ります」

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