第13話 作戦開始


 連合国の鬼神は15機を1大隊として編成し、クランダ連邦の第1、第2大隊、イシュル王国の第4~第5大隊、スール王国の第6大隊、ダナン公国主体の第7大隊となった。


 第1~第6は15機の大隊だが、第7大隊はP-2とP-4の他Z-5が5機しかおらず、とりあえず、遊軍ということになった。


 偵察班からの情報では帝国側も迎撃準備が行われており、クランダ領のほぼ中央にある高地で両軍が激突する見込みであった。


 帝国はN-2を60機横に広げて展開しており、2列目に20機、その後ろに4機の指揮官機体という布陣らしかった。


 連合国側は第1~第5大隊までを横に並べて75機で敵の一列目を壊滅させ、そのまま2列目、指揮官と討ち取る方針が決定した。


 連合国からすれば、ヴァルド皇太子や将軍といった化け物級の機体が確認されていないのが幸いだったが、不安でもあった。


 作戦指揮官でもあるウルフにも不安はあった。


 ただ、未確定の敵戦力に備える余裕はなかったし、ダナン公国の特にP-4という機体はかなりの戦力になると期待できた。


 


 正教会歴1315年4月3日反抗作戦は開始された。




 両軍合わせて180機ほどの鬼神が戦場に投入されるという、戦史上初めての戦い。


 勇敢だったのは、クランダ連邦のL-5だった。


 祖国を解放するという想いは、自然と機体に乗り移る。


 第1、第2大隊は敵陣深くまで入り込んでいく。


 その2大隊の突破したところを第3から第6大隊までがさらに広げていく。


 また、第6大隊はヒナ王女を中心として、結束し、かなりの戦果を挙げていた。


 P-2とP-4が所属している第7大隊には距離を取って戦況を見守るよう指示が出ており、少し小高い丘の上から戦況を観察していた。


 

 P-2のハッチを開けてヴェル公女がラスタを呼ぶ。


 「はい?」


 「どう?実戦よ」


 「なんか、緊張します」


 「そう?私は戦いたくてうずうずしてるわ」


 「そうですか?でも、このままでいくと俺たちには出番なさそうですよ」


 「そんなに甘い物じゃないでしょ」


 「俺はこのまま何もしないでP-4を無傷でダナンに帰りたいです」


 「男の子がそんなこと言っていちゃだめでしょ」




 2人が話をしていた頃、敵陣後方にいた4機の帝国指揮官用機体ヴァルドL-5が最前線へ投入される。


 強い。


 カラナとサッテの強さは4機の中でもずば抜けていた。


 Z-5が1機、また1機と倒されていく。


 

 そこにウルフことクランダ連邦の将軍ナーラとスール王国王女ヒナが立ちはだかる。


 帝国軍は指揮官の登場に沸き立ち、戦場は一気にヴァルド軍優勢にまで傾いた。


 Z-6改とZ-5改、それぞれL-5を2機ずつ引き寄せて戦場から少し離れた場所まで誘導する。


 ウルフのZ-6改の相手は第1旅団団長のカラナと副官、ヒナ王女のZ-5改の相手は第2旅団のサッテ団長と副官だった。



 Z-6改は大剣を持ち、L-5は剣と盾を持つタイプだ。


 Z-6改が踏み込んでから剣を叩きこむが、盾でうまくかわされてしまう。


 その間にもう1機のL-5に胸部・腕部・脚部と小刻みにダメージを食らう。


 「まずいな」


 そこに、配下のZ-5が2機援軍にやってくる。


 「馬鹿、何しに来やがった」


 L-5は、性能の差を活かして、乱入してきたZ-5を瞬殺する。


 Z-5の魔力石が爆発し、パイロットも命を落とす。


 それでも、ウルフ配下のZ-5は1機、2機とウルフの援護にきた。


 「お前ら、何しに来たんだ」目頭めがしらを熱くしながらウルフが叫ぶ。

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