第9話 スール王国


 スール王国は鉄の産地として有名である。

 連合国各国に鉄を輸出し、最も潤っている国とも言える。


 王女ヒナは愛機のイシュルZ-5改に乗って模擬戦闘を繰り返していた。


 ヒナのZ-5改はスピードに上方修正を加えた機体である。


 その分耐久力が低い。


 ヒナは既に5回ほど実戦を経験しており、N-2を5機破壊している。


 スール王国から派遣予定のZ-5はヒナの機体以外に14機。


 今日の模擬戦闘には全機が参加している。


 

 スールの軍は他国に比べると小さいが団結力があった。


 鬼神乗りはほとんどが10代の少年少女だったが、ヒナ王女のことを敬愛していた。


 「王女に命を捧げる」


 それほど、絶対的な忠誠、そして、国の中から15人しか選ばれない鬼神乗り、ナイトの称号。


 純粋であった。




 ただ、スール王国上層部、女王ヒルダや国王アッシュ、宰相クラリスなどは戦争によって高騰こうとうしている鉄鉱石から得られる税収が大切であった。


 スール王国の国力からすれば、鬼神の数を増やすことも独自開発することも可能であるが、それにかかる費用は莫大なものになる。


 その部分は他の連合国に任せて、内政を充実させていた。


 スール王国はヴァルド帝国や他の連合国に比べれば税金が安く、難民支援策も充実している。


 クランダ連邦からの難民も積極的に受け入れ、イシュルの国債を買い支えるなど他国の支援もおこたらない。


 戦争にあっても、したたかに独自外交を行い、連合国で唯一ヴァルド帝国との外交がある。


 もし、今回の反抗作戦が成功し、停戦となるのであればスール王国が前面に出て交渉を行うことになるだろう。


 但し、帝国の出方は全く不透明だが。



 3時間の模擬戦が終わり、ヒナはZ-5改をデッキに格納する。


 模擬戦でいい動きをしていた少年兵を呼び止め、名を聴く。


 少年は照れたように、下を向きながら名前を名乗った。




 ヒナは18歳、黒い髪をいつもポニーテールにしている。


 魔装スーツ騎乗用の肌にぴったりとしたスーツが色っぽい。


 ヒナの汗の匂いまで、フルーツを思わせる。

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