第8話 イシュル王国


 イシュル王国は海洋国家である。

 大陸国家のヴァルド帝国とは戦争になる以前から対立していた。

 鬼神が実戦投入されてからわずか5年でイシュル王国でも量産できたのは、既に基礎研究まで終わっていたからである。

 イシュル王国とヴァルド帝国は常に覇権はけんを争っており、現在は鬼神開発を対立軸として競い合っている。



 イシュルの王子クランは、イシュルの魔装スーツ開発責任者のイルバーナ大将を公邸に呼びよせていた。


 「イルバーナ、イシュルZ-5の後継機種についてはどうなっている」


 「はい、魔法石と疑似魔法石を組み合わせた試作機を4タイプほど作成しておりますが」


 「疑似魔法石のタイプか、たしか、魔法石0.3個分ということだな」


 「はい、魔法石1つにつき2つまで装着可能です」


 「魔法石が2つであれば、3.2まで上がると言うことか?」


 「いえ、疑似魔法石は魔法石が2つ以上ある場合は装着できません」


 「それでは、1.6が上限ということか?」


 「はい、そうなります」


 「それでは、魔法石が2つ装着されている、俺のF-8までの出力は出ないということか」


 「はい、ただ、魔法石のみで複数装着するには様々な条件があり、量産が不可能です、疑似魔法石であれば量産が可能になるかと」


 「なるほどな、量産型としてはZ-5の後継機種として優秀だな」


 「ただ、情報によると帝国はすでにN-2の後継機種の量産化が近いとか」


 「その情報は入っている、だから呼んだのだ」


 「今回の反抗作戦には、おそらく帝国側は間に合わないかと」


 「そうか、今回の作戦、俺は参加を見送ったが、どうにもぎりぎりだな、帝国側に何か隠し玉があれば危ないぞ」


 「それは連合国側にもあります」


 「ダナンか」


 「はい」


 「ヴェル公女のP-2に破壊されたZ-5の残骸を見れば、かなり強力な機体であることは想像できるが」


 「ダナンにはもう一機新型がございます」


 「ああ、噂だと魔法石3個積んでいるらしいな」


 「はい」


 「俺のF-8が2個積むのにどれだけの労力がかかったことか、3個積んでいるなどというのは都市伝説ではないのか?」


 「情報によりますと、P-2ももう一機の新型には全く歯が立たないとか」


 「それは頼もしいが・・・」


 「魔法石を3個積むにはそれぞれの魔法石の魔力が99.99%以上合致していなければなりません、おそらくは、3個積んだ機体は帝国にも1機あるかどうかです」


 「サ=ヴァルドのヴァルドV-2か」


 「はい」


 「まあ、良い、今回、我が国は45機のZ-5を投入する、その調整は頼んだぞ」


 「かしこまりました」

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