第5話 帝国の機体

 模擬戦が終わると、ヴェルとラスタ、それにザッカヴァーンが集まって戦闘結果の分析を始める。


 P-2の動きはいいが実戦投入した場合にどれくらいの戦果が上げられるか。帝国のヴァルドN-2なら、P-2で5機程度は制圧できると考えられていた。


 4か国連合の反抗作戦が近づいている中、P-2もP-4も実戦投入は直前であった。


 「そもそも、N-2を基準に考えているが、指揮官タイプのヴァルドL-5についてデータはあるのか?」


 「鹵獲機体がありませんので、L-5についてはデータ不足ですヴェル様」


 「そう言いながら、ザッカヴァーンなら、裏データがあるのだろう?」


 「予測値ではありますが、L-5はN-2の1.8倍から3.0倍程度の総合能力かと」


 「そうすると、私のP-2とほぼ互角というところか」


 「はい、そうなります」


 「確認されているL-5の機体数は?」


 「現在、帝国の各旅団団長と副団長が1機ずつ、計8機です」


 「サ=ヴァルドの乗っている機体についてはどうなんだ?」


 「ヴァルド帝国皇太子の機体ですか」


 「ああ」


 「機体名を含めて全く未知数です」


 「そうか・・・、ラスタは何かあるか?」


 「あ、はい、公女、もう少し、機体のやりたいようにやらせてあげてはどうかと思います」


 「機体のやりたいように・・か」


 「はい、P-2は名機です」


 「そうか、ありがとう、今日はこのあたりで帰る、次に会う時は作戦の時かもしれないな」


 「はい、ヴェル様」




 ヴェルはP-2に乗り込むと、各種計器類をチェックする。


 「お前に無理はさせていないよな?」魔法石に向かって話しかける。


 魔法石はただ、優しい光を放っている。


 P-2の巡航速度で30分の公邸までラスタの言葉を思い返していた。




 「ラスタ」


 「はい、ザッカヴァーン大将」


 「明日は休暇だ、ゆっくりしていい、但し、お前はこの施設の外に出ることは禁止されている、分かっているな?」


 「はい、えっと」


 「なんだ?」


 「P-4の手入れをしてもいいですか?」


 「許可する」


 「ありがとうござます」

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