第4話 模擬戦

 ラスタはヴェル公女を連れて施設内を案内する。


 ヴェルの顔は施設の誰もが知っているので、すれ違うたびに職員は敬礼をする。


 ヴェルは涼しい顔で軽く会釈をする。


 ヴェルとラスタは同じ年だ、ヴェルが公王家の生まれなのに対して、ラスタは戦災孤児である。


 ラスタとヴェルが生まれた年に丁度、ヴァルド帝国の魔装スーツが実戦に投入されたことになる。



 「ねえ、ラスタ」


 「はい」


 「P-4もP-2もまだ実戦には出ていないけど、その能力は他を圧倒しているわ」


 「はい、そう思います」


 「でも、私たちが研究しているということは、ヴァルド帝国もイシュル王国も研究しているということ」


 「はい」


 「ただ、ラスタ、あなただけは研究ではどうにもならない、公国の宝だわ」


 「そんな、俺なんて、そんな大したものじゃないですよ」


 「ううん、分かる、今まで、ラスタとは何回も模擬戦をしたもの、他のパイロットとは全然違う」


 「ありがとうございます」



 2人は、3階にあるカフェテリアでコーヒーを飲みながら話している。




 ヴェルとラスタが知り合ったのは4年前、ヴェルは公女としての教育の一環として魔装スーツに乗り込んだ。

 そこで、適正が見いだされ、ヴェルは他のきょうだいを差し置いて最高司令官まで登りつめた。現状、司令官の評価は鬼神乗りとしての強さと近かった。

 ラスタは孤児として、ずっと戦闘訓練を受けてきた。

 魔装スーツに乗り込むのもごく自然な流れだった。

 ただ、ラスタの場合、その適正が異常なほど高かった。

 魔装スーツの総合能力において、パイロットの占める割合が高いゆえに、ラスタは特別視され、P-4も、ほぼラスタ専用機として作られた。


 


 2時間が経ち、2人は整備工場に戻り、ラスタはP-4に乗り込んだ。


 公女をP-4の肩に乗せるとP-2の所まで連れて行く。


 

 ダナンP-2


 パワー1:スピード1.7:耐久力1.2というパラメータ配分の機体である。


 ヴェルの適正と相まって相当に強い。


 

 

 ザッカヴァーンの立ち合いの下、模擬戦が始まる。


 P-2とP-4がそれぞれ相手に向かって歩き始める。


 P-2はランスを装備している。


 P-2は無駄のない動きから、ランスをP-4目がけて突き出す。


 今までイシュル王国のZ-5を何体も破壊してきた必殺の突き。


 しかし、P-4は軽々とかわしていく。


 「やるわね、ラスタ」


 そこから、連続の突き。


 P-4は距離を取ってランスの攻撃範囲から離れる。


 「まだまだあ」


 P-2は踏み込んで、ランスを薙ぎ払うように動かす。


 一度、P-4の装甲に切っ先が当たる。


 さらに、P-2が踏み込んで、近づいてから体当たりをする。


 P-4のコクピットにいるラスタに軽い衝撃が走る。


 ラスタがステータスバーを見ると、胸部のステータスが100から99になっていた。


 「ああ、これはユーナに怒られるやつだ」P-4のコクピットでラスタはため息をつく。


 ヴェルが調子づいて、さらにランスで強く突きを入れたところで、ラスタのP-4が剣でそのランスを弾き上げ、遥か後方にランスは飛んで行った。


 P-4の剣の先がP-2の装甲を少し削った所で、止めの合図がなり、模擬戦は終了となった。

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