ダナン公国

第2話 ダナンP-4

 魔装スーツの性能は、パイロットの適正(平均50)×相性値(平均0.5、年を取るごとに減少)×魔法石による増加係数(1.0~)が総合能力を求める式になる。


 例えば、ヴァルド帝国の一般的な18歳のパイロットは、適正50×相性値0.5×1(ヴァルドN-2の魔法石が1個なので)で、総合能力25となる。


 その25の能力を、魔装スーツのパワー、スピード、耐久力の3つのパラメーターに振り分けるのが開発者の仕事であり、最も平均的なヴァルドN-2では、パワー2:スピード1:耐久力2の比率で振られている。

 先ほどの総合能力25のパイロットの場合、パワー10、スピード5、耐久力10となる。

 同じ型式でも、このパラメーターは機体によって若干異なっており、様々なバリエーションがある。


 


 

 「ラスタ、調子はどうだ?」


 「ザッカヴァーン大将、順調です!」


 「そうか、今回の機体、お前が1,000回くらい人生やり直してもまだ足りないくらいの金がかかっているからな」


 「あまり、怖いこと言わないでくださいよ」


 「しかし、相性値が1.3か、すごいものだな」


 「いえ、なんていうか、鬼神カミはかわいいんですよね」


 「かわいいは、いいが、おもちゃではないからな」


 「はい」


 「まだ、試運転が終わってないだろう、行ってこい」


 「はい、ザッカヴァーン大将」



 「おい」


 「は」


 「総合能力はどうなっている?」


 ダナン公国の魔装スーツ開発部門、現在は試作4号機、ダナンP-4を開発していた。


 「ラスタの適正が130、相性値が1.3、ダナンP-4の魔法石が3個ですから、507になります」


 「507か・・ヴァルドN-2の20倍だな」


 「はい、ザッカヴァーン大将、計算上はそうなります」


 「パラメーターはどうなっている?」


 「パワー1:スピード1:耐久力1で割り振っております」


 「すごいな、ダナンP-4が実戦投入されれば戦局が変わるぞ」


 「は、ただ、パイロットの変更が効きません」


 「他のパイロットではだめなのか?」


 「相性値が0.1程度になってしまいます」


 「13分の1か・・・」


 「はい」


 「予備パイロットのほうは引き続き育成、募集を続けるように」


 「はい」


 


 ラスタは、ダナンP-4のコクピットに乗り込む。


 P-4はまるでラスタのことを待っていてくれたかのように、優しく光る。


 コクピットからは、正面に3つ、背後に1つ、上に1つ、下に1つモニターがあり、全方位が見渡せる。


 両手を目の前にある3つの魔法石にかざす。


 P-4は駆動音とともに、静かに立ち上がる。


 軽く歩き始める。


 演習場は広い芝生になっており動きやすい。


 装備は、人で言えば通常サイズの剣となるのだろうか、全長4メートルの魔装スーツが持つのだから、それなりに大きい。


 演習場をゆっくり往復し、徐々にスピードを上げていく。


 ヴァルド帝国の量産機ヴァルドN-2などはメインフレームが鉄であるが、ダナンP-4はオリハルコンという魔法鉱石を使用していた。

 鉄鉱石の中にごく稀に含まれる物で、現状量産は不可能な素材だったが、鉄より軽く、かつ硬い。


 速度を上げて走ると金属音が演習場に響き渡る。


 走りながら剣を振る。


 演習場内にある、標的模型を攻撃するが、大音響を立てて標的は崩れ去る。


 

 2時間ほど、P-4で訓練をした後、ラスタは機体をデッキに戻して地上に降りた。

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