鬼神

神名 信

序章

第1話 鬼神

 ヴァルド帝国と4か国連合の戦争。


 それが何年に始まったか、見解に争いがある。


 ただ、言えることは、ここ300年。ヴァルド帝国とイシュル王国・クランダ連邦・スール王国・ダナン公国の4か国連合の戦争は激しさを増すばかりということだ。



 正教会歴1300年


 初めて、「ソレ」が戦線に投入された。


 ヴァルド帝国とグランダ連邦の主力が正面からぶつかったソレイユの戦いである。


 緒戦においてグランダ連邦を初めとする4か国連合は優勢を保っていた。


 4か国連合の兵力は30,000人、それに対するヴァルド帝国は25,000人だった。


 国境を侵して入ってきたヴァルド帝国に対し、正面からぶつかって、押し返そうとしていた。



 その時、前線司令官から、鬼が出たという、内容不明の伝達が軍司令部に届いた。


 鬼?


 複数の偵察部隊がその正体を見極めるために最前線へと向かう。




 偵察部隊が見たのは、首のない巨人、後に鬼神カミと呼ばれる、魔装スーツであった。



 人では絶対に持てないような大剣を振り回し、高速で移動し、装甲も固い。



 ソレイユの戦いでは、鬼神の活躍によってヴァルド帝国が大勝利を収めた。



 その時、ヴァルド帝国で使われていた魔装スーツがヴァルドN-2と呼ばれる型式のもので、全ての魔装スーツの標準値となっている。



 魔装スーツは魔法石を原動力として動き、胸部きょうぶ腕部わんぶ脚部きゃくぶの3か所に分かれる。

 搭乗者は胸部ハッチから乗り込み、操縦する。

 胸部・腕部・脚部はそれぞれステータスバーが振られており、初期値が100、ダメージを受けると減少していき、性能劣化、破損、となり、20を切ると稼働できなくなる場合もある。


 ソレイユの戦いから、5年間は連合国側に対抗手段がなく、各地でヴァルド帝国は連戦連勝であった。


 1305年になると、ようやく4か国連合の盟主イシュル王国が魔装スーツを実戦投入し、4か国連合は部分的な勝利を収める。


 しかし、鬼神の数と質で勝るヴァルド帝国は各戦線で押し気味に戦争を展開していく。


 イシュル王国は連合国に無償で魔装スーツ、イシュルZ-5を貸出し、対抗していく。


 ただ、4か国連合の中でもダナン公国は独自の魔装スーツ開発を目指し、イシュル王国からの提供を拒み続けた。


 

 ヴァルド帝国が、隣接するクランダ連邦の領土の半分を占領し、4か国連合が奪還作戦を検討している状況で1315年を迎えた。

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