第4話 ④

『――さて、今回総勢115名の職員が名を連ねた春のアクセサリーコンテストですが、いよいよ結果発表となります! いずれ劣らぬ美しき宝飾品たちのいずれかに最高宝飾品の栄冠が与えられるのです!』


「さあ、いよいよだね。視聴者投票ではもちろん、僕たちは全員一致でマリアちゃんに投票しているからね!」


「組織票されたら生産ギルドと宝飾品ギルドには絶対に勝てないだろう?」


「宝飾品ギルドは知らないが、生産ギルドの連中はそのあたりの線引きは恐ろしくシビアだって聞いたぞ? 職人の誇りにかけて自分の目利きに嘘は付けないんだとか」


「それに、いまSNSでもこのコンテストが注目を集めていますし、ギルドのしがらみのない方からの一般投票の流れ次第では結果はわかりません!」


 サラサちゃんまで熱くなってるー。私はもう半分より上だったら嬉しいぐらいの気持ちなんだけどなー。


 そして順位が下の作品から発表されていく。115位から16位までの100人分はダイジェストで紹介されていったけど、まだ私の作品は出てきていない。


 15位からは簡単なコメント付きで1品ずつ紹介されていくけど・・・・・・はて? まだ出てこないわね。


 発表自体はテンポよく進み、10位セリアナさんの虹リボン、9位アールガムさんのイフリートバレッタ・・・・・・・・・


「次からは上位入賞の5位以上ですよ、マリアさん!」


「え、ええ、そうね・・・・・・」


『次は5位! 匿名希望参加の方の作品で――――『フェアリーフェザーピアス』です!』


「はい、4位以上確定だね!」


 え、うそ?


『続いて4位! 宝飾品ギルドの若きエース、ゼルシランさんの『天覧水晶のブレスレット』です!』


「おお、これでメダル圏内確定だ」


 ・・・・・・実は途中で聞き逃していたりしないかしら? ほら、ダイジェスト紹介の時とか。


『さあ、ここからは表彰メダルが授与されるトップ3の発表です! トップ3の先陣を切る第3位! 匿名希望参加の方の作品です! そう、これはあの『煌紅玉のネックレス』です! 前代未聞、空前絶後の固有スキル付き装飾品にして審査員一同を感動させた逸品が、堂々の3位入賞です!!』


『素材の質、その選択がまず素晴らしい。希少な最高品質の素材を用いており、それがさらに作品の完成度を高めているよ』


『忘れてはいけないのが品質の良い素材であればあるほど生産の難易度が跳ね上がり、作品を完成させることが困難となること。全てが最高品質の素材を用いているということがこの作品の生産がいかに困難な物であったかを雄弁に語ります。それでいて最高品質に仕上げた職人の技術とセンスには脱帽ですわ!』


『他の審査員も語った作品自体の素晴らしさに加えて前代未聞の固有スキル付きという事実。しかもそのスキルというのも素晴らしい! 『不死鳥の炎核』は身につけるだけで毎秒10%もの体力回復効果があり、さらに死亡時に宝石を身代わりとして1度だけとはいえ完全回復状態で復活できるという代物なのだ! 装飾品としての美しさだけでなくこの性能! 十分に優勝を狙えるだけのポテンシャルを備えており、後の2作品と比して尚、我々を悩ませてくれた素晴らしき逸品だ!』


「おおー。凄まじいくらいの大絶賛だな。何はともあれ、3位入賞おめでとう」


 アクセリオンさんが祝ってくれてるけど、実感がないのが淡々としてる。まあ、私だって現実感がなくてポカーンとなっているのを自覚しているから何とも言えないけどね。


 ちなみに生産職ギルドの主任さんが2位で宝飾品ギルドの設立者さんが1位だったんだけど、我に返った時には表彰式も終わってライブ中継も終了していたのよね。


「よし、今日は祝いだ――と言いたいが、あんまり大はしゃぎしていると勘ぐられそうだな」


「それでしたら、お料理や飲み物などを持ち寄ってお祝いの雰囲気だけでも感じていただきたいです!」


「といってもゲーム内の行動だしな。入賞祝いは後日にでも用意して渡すとして、なんだったらオンラインパーティーでもするか? みんながどのあたりに住んでるかわからないからオフ会っていうのも大変だろ?」


 ゲームの中でもパーティーとかするのは雰囲気を楽しめるから私は好きだけどね。でも、オフ会か。あ、どうせならこの際聞いちゃおうか。


「そういえばアクセリオンさんのリアルってどんな感じなの? 私たち、フレンド間ではリアルの事もある程度話してて、アクセリオンさんだけ聞けてなかったなって。あ、もちろんリアルは言いたくないっていうならいいのよ? こっちも無理に聞こうとは思ってないから」


「ん? ああ、そうか。ホッブから聞いてると思ってたが、話してなかったんだな。リアルの事を話すのはいいんだが、どの程度まで話せばいい?」


「そうだね~。僕らはリアルで何をやっているかくらいしか話してないよ」


「俺はリアルは中学生だってことくらいしか話してない」


「私は・・・その、普通に自己紹介をしてみなさんから話すぎだと注意されました。あ、私はその、小学6年生です」


 ゴルトくんとサラサちゃんが先に自分のことを話してる。て、確かにサラサちゃんは自分の名前も家のことも話し始めて、勢いどの辺りに住んでいるかまで話しそうだったから止めたのよね。


「それなら、俺はリアルじゃ高校生――高1だな」


「それではマリアさんと同じですね」


『たぶんマリアとは同級生だ。おまえ、陽月だろ? 俺、同じクラスの火神だ』


 ぶっ。サラサちゃんの反応の裏で個別メッセージでなんとういうカミングアウトを?!


『か、火神くんって、火神龍之介くん? あの、いつも教室で本読んでるあの?』


『そうだよ。このまえ籠原とBSオンラインの話をしてたろ? 盗み聞きのつもりはなかったんだけど、ゲームの話だと思ってつい聞いちゃってな。すまん』


『いや、それはいいよ。教室で普通に話していたんだし、聞かれて困る話じゃないし』


 みんながワイワイ話している裏でアクセリオンさん――いや火神くんとリアルのことで確認をする。


『まあ、リアルの方は基本的に今まで通りでな。急ぎの用事の時とかあったら声を掛けるかもだけど』


『あ、うん。了解。こちらもその方が助かるよ』


 思わぬ身バレ――こういうのも身バレっていうのかな?――に動揺しつつも、リアルの自分のすぐ近くにフレンドさんがいるという事実がちょっと嬉しい私でした。

                              

                              【第4話・終】

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