第3話:驚愕の条件
「最初の条件でございますが、ゴールド公爵閣下と結婚していただきます」
私は、公爵の姿が信じられなかった。
私のような細腕の女を恐れるように、騎士や執事に隠れている。
それどころか、頭から被った布団から出てこないからだ。
全ての会話は、ロメロ準男爵殿が間に入ってしてくれる。
王国を陰で牛耳る冷酷非情な公爵はどこにいるのだ!
「結婚した後は、ゴールド公爵閣下に成り代わり、表の交渉を全てやっていただきますが、心配する必要はありません、私達が補佐させていただきます」
ロメロ準男爵殿が恭しく私に頭を下げてくれたかと思うと、この部屋にいた全執事と全騎士が最敬礼してくれる。
これは、これでは、断るのがとても怖い。
ダニアは、こんな秘密を知ってしまったら、承諾するか殺される以外の道がない事に、今ようやく気がついた。
「次にこの結婚は白の結婚とさせていただきますので、ダニア様には好きな方を愛人としていただきます。
その上で、ダニア様と愛人の間に生まれた御子を、ゴールド公爵家の跡継ぎとさせていただきますので、愛人には自分の子供だとは絶対に気取られないでください。
気取られるような事があれば、その愛人を殺します。
ですので、十分に気をつけていただきます」
私は鋼鉄のハンマーで頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
普通、貴族ほど自分の血に拘る者はいない。
高貴な正統な血筋であることが、貴族の絶大な権利を受け継ぐ絶対条件だからだ。
なのに、自分の子供ではなく、私と愛人の間にできた子に公爵家を継がすと言う。
狂気としか言えない言動なのに、家臣達に一切の動揺がない。
事前に理由を話していたか、揺るぎない信頼関係なのだろうと、ダニアは衝撃から立ち直ってようやく思う事ができた。
「正気に戻っていただけたようでございますね。
基本的にはこの二つが代えがたい条件ですが、細々とした条件は、後ほど書面にして改めて説明させていただきます。
その前にこちらが出せる大切な代償の話をさせていただきます。
ダニア様の屋敷でも話させていただきましたが、ダイン男爵家が押し付けられた借財は、全てなかったものにさせていただきます。
ダイン男爵閣下を騙したモノを探し出し、生まれてきたことを後悔するほどの拷問を繰り返し、裏にいた黒幕の名を白状していただきます。
ダニア様に不埒な視線を向けたガマガエルは、一族一門ことごとく地獄に送って差し上げますから、ご安心くださいませ。
ゴールド公爵家の分家を乗っ取ろうとしたモノを、公爵閣下がどのように扱うのか、国内外の王侯貴族に思い知らせなければいけません」
ダニアは、ゴールド公爵家筆頭家臣、ロメロ準男爵殿の本当の恐ろしさを、この時初めて知った。
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