第4話:驚愕の真実

「何故このような条件なのですか、これでは信じられません。

 こんな条件になる理由を教えていただけなければ、お受けできません」


 ダニアから見れば信じられない好条件だからこそ、真実が知りたかった。

 ゴールド公爵の本性を知った以上、受けるか死ぬかしか道はない

 だったら、知って受けるか、知って死ぬかを選びたかった。

 知らずに受けて後で殺されるのだけは絶対に嫌だった。

 納得できる理由を知って、全力で役割を果たし、堂々と報酬を得る。

 それが今のダニアにできる、誇りを守る唯一の方法だった。


「死を覚悟されておられるようですね、分かりました、お話ししましょう」


 それからポツリポツリとロメロ準男爵が語りだした。

 ゴールド公爵ヴィルヘイム卿の壮絶な人生を。

 わずか七歳で両親を毒殺され、自分も同じ毒で生死の境を彷徨った事。

 毒を盛ったのが、ゴールド公爵の爵位と財産を狙った、父の弟、実の叔父であり、生き残った後も執拗に命を狙われ続けた事。


「助けを求めた二番目の叔父上には、傀儡にさせられそうになられて……」


 毒による後遺症で苦しむ幼いヴィルヘイム卿は、両親を殺した一番上の叔父ではない、二番目の叔父に助けを求め、何とか両親の仇をとった。

 だが今度はその二番目の叔父が、ヴィルヘイム卿を傀儡にしただけでは満足せず、殺して当主になろうとした。

 事故死に見せかけて殺そうと、執拗に罠を仕掛けてきた。

 今説明をしてくれているロメロ準男爵がまだ少年の時代、先代と先々代のロメロ準男爵、今この場にいる従僕や侍女の父や祖父が、命懸けでヴィルヘイム卿を護った。


「父方の叔父達ばかりか、叔母達や従兄弟や再従兄弟、いえ、母方の親戚まで、眼の色を変えて公爵閣下に近づき、騙して利を貪るだけでなく殺そうとまでしました」


 ダニアにも、布団の頭から被って隠れているにもかかわらず、ヴィルヘイム卿が震えているのが明らかだった。

 部屋にいる従僕や騎士や侍女の半数が、すすり泣いていた。

 ヴィルヘイム卿の不幸な生い立ちに同情している者、その時に一緒に戦った老齢な者、その時の争いで父や祖父を殺された者がいた。


「公爵閣下は、その時の恨みを片時も忘れられておられません。

 直接間接に加担した者は、皆殺しにいたしましたが、どうしても家を残さざるをえなかった縁戚が幾つかございます。

 このまま公爵閣下にお子が生まれなければ、その家の者がゴールド公爵家を継ぐことになってしまいます。

 公爵閣下も我々も、それだけは絶対に許せないのでございます。

 それよりはダニア様のお子様にゴールド公爵家を継いで頂きたいのでございます」

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