自然消滅

 俺と同棲中の恋人、アヤから差出人不明の荷物を渡された。


「郵便受けに入ってたんだけど、あんた宛てじゃない?」

「宛先書いてないじゃんか」

「けどうちの郵便受けに突っ込まれてたわよ」


 うちって。ここは俺が借りているマンションであって、アヤはいつの間にか当たり前のように居座っているだけだ。


 俺としては同居や同棲を了解したことはないし、家賃も光熱費も入れてもらったことがない勝手な居候だと思っているので「うち」と自分所有のもののように言われるのは少し腹が立つ。


 まぁ、だとしても恋人である以上「でていけ」というのも憚られるので我慢しているわけだが。


「開けてみてよ」


 アヤに促されて仕方なく包みを開くと、中に入っていたのは使用済みのドス黒く汚れたガーゼが一枚だけ。


「なにこれ汚い」


 この黒い部分は血が乾いた跡だろうか。


 アヤも気味悪そうにしているが、俺はこのガーゼから良からぬ気配を感じ取り、血の気が引いてきた。


「これって―――」

「ひっ」


 アヤが小さな悲鳴を漏らすと、ガーゼの中から小さな蛆虫が一匹湧いて出た。それは短い体をウネウネと動かしながらゆっくりと、確実に、包みの外に出そうと移動している。


 俺もアヤも虫が苦手でゴキブリ一匹で阿鼻叫喚になる。だが、ここは俺が男として踏ん張るべき場面だろう。


 湧いてきた蛆虫ごとガーゼの入った包みを丸め、ゴミ箱に叩き込―――もうとしたらアヤが「そんなとこに入れないでよ!」と叫んだ。


 確かにゴミ箱の中で蛆虫が羽化したら最悪だ。


 こいつはゴミ袋に入れて密閉してマンションのゴミ捨て場に持っていくしかない。しかしゴミ回収日は明後日の朝だし、それ以外の日に持っていくと、常にゴミ捨て場を監視している何処かのババアに怒られる。だから数日はこいつと一緒に生活しなきゃならない……のか。


 頭の中で嫌悪感を出していたら、俺の足元にポトリと米粒のようなものが落ちた。


「!」


 厳重に丸めたはずの包みから蛆虫が落ちてきた!


 俺もアヤも「ひぃぃ!」と仰け反ったが、こうなったら直接始末するしかない。


 俺はティッシュペーパーを何重にも重ねて敵を押しつぶすことにした。普段なら「そんなにティッシュ出さないでよ」と俺が買った俺の家の備品なのに口うるさいアヤも、今回は大目に見てくれている。


 よし、いくぞ。


 自分に気合いを入れて蛆虫を指先で押しつぶす。


 ぷちり、という嫌な感覚がティッシュ越しに伝わってきたが、確実にやつは圧死しただろう。


 気持ち悪さはあるが「始末した」という安心を得るためにティッシュを覗き込む。


「!?」


 生きている。蛆虫はまだピンピンしている。そればかりか俺の手の中にあるそれは蛆虫ではなく頭か尻尾に鎌のような鋭いものを備えた別の小さな虫に変身していた。


 そしてこいつは俺が今までに感じたことのない異様な悪意と怖気をまとっている。到底この世のものとは思えない不気味な虫だ。


「早く潰してよ!」


 お前が持ってきたんだから自分でやれよと言いたくなったが、そんな事を口にすれば「男のくせに!」と昨今のポリコレ思想では袋叩きに合う発言が返ってくるのは目に見えているので黙る。


 俺は再度指先に力を込めてぷちりと虫を潰した。今度は確実性を増すために指先をこすって磨り潰した。


 だが、ティッシュを明けてみるとそこには元気に動いている虫がいる。今度は体にカマドウマのような細く長い脚が大量に生えつつある。


「ひぃぃぃ!」


 脚がある虫はもう俺にとって殺せる対象じゃない。無理だ。


 するとアヤは俺からティッシュを奪い取ると、すぐさま丸めてフローリングの床に置き、ベッド脇の放置されている分厚い結婚情報誌で叩いた。なんだよ、できるなら最初からやれよ。


 アヤは虫を執拗に叩いたのできっとティッシュの中で四散していることだろう。見たくはないが心の平穏のために死骸を確認したい。


 俺はそっとティッシュを開いた。


「!」


 まだ生きている。しかも蛆虫だったそれは、ゴキブリのようにずいぶん大きくなっていた。更に言うとゴキブリよりも脚が多く、動きは緩慢だが気持ち悪さは百倍以上になっている。


 それは蛇行するような動きでティッシュから出てきた。


 もうこうなったら捕まえられない! 俺はとっさにアヤの手を掴み、住み慣れた我が家から飛び出した。


「ちょっと! 私達が出ていってどうするのよ! あっちを外に捨てないと!」

「無理だろ! あれはこの世のものじゃない!」


 包みに入っていたガーゼを見た時から感じていた。


 自慢じゃないが俺には霊感のようなものがある。霊そのものをはっきり見たことはないが、悪想念の類を感じ取る感覚だ。その俺の感覚が「これは危険だ」と悲鳴を上げ続けていたのだ。


 あのガーゼはおそらく呪物。アヤか俺を呪い殺すために送られてきたんだと思う。


「お前、誰かに恨まれたりしたか」

「はぁ? なに言ってんの?」

「あれは呪われて……」

「ちょっと! 虫嫌いだからってそんな無茶苦茶な言い訳しないでよ。ほら、家に戻って始末してきて!」


 アヤは超現実主義なのでオカルトを一切信じない。彼女の仕事も粒子を加速させるだとかなんとか、俺にはよくわからない分野で技術者をやっているくらいだ。


「いや、マジなんだって! お前も見ただろ。虫があんな短時間でどんどん姿を変えてくなんておかしいだろうが!」

「……」


 アヤが黙った。あの虫の変身が異様なことは理解しているようだ。


 その時、背中がゾワっとした。


 嫌な予感がして自宅玄関ドアを見ると、ドアの縁の僅かな隙間から虫が這い出てくるのが見えた。


 ヤバい。なんだあの気持ち悪くてドス黒いオーラは。しかもドアの外に出てきたそれは、さっきより明らかに大きくなって俺の親指よりでかい。


「嘘でしょ!」


 そう叫びながらアヤは俺を置いて非常階段を駆け下り始めた。


 ここは七階だが、彼女がエレベーターで降りないのはボタンを押してからの到着を待っていられない事と、移動できない密室で襲われたら一巻の終わりだと瞬時に計算してのことだろう。


 しかし俺を置いて自分だけ逃げるなんて、なんて女だ! 本性表しやがって!


 後に続いて俺も非常階段を駆け下りる。


 やつの動きは不気味だが遅い。人間が走れば追いついては来れないだろう。だが―――あれが生き物ではなく「呪物」なのだとしたら、どこまででも追いかけてくる。そしてあれに触れられてしまったらどうなるのか想像もできない。


 俺にとってもああいうものは初めての遭遇だが、呪物に常識は通じない気がする。


 たとえ飛行機で遠方に移動しようとも、やつは距離や時間を飛び越えてやってきそうな雰囲気を醸していたし、大体のホラー映画でも逃げ切って安心したところでやられるのがオチだと決まっている。


 そして建物に通気口がある以上、あの虫の侵入を拒めるような場所はどこにもない。完全に密閉された部屋なんてものはないし、あったとしたら酸欠になるだろう。


「アヤ! どこに行くんだよ!」

「研究所!」

「どうして!?」

「いいから!」


 階段を駆け下りながら喋ると舌を噛む。俺は黙ってアヤの後ろに着いて降りる。


 ようやく一階に辿り着いた時、非常階段の手摺に何かが落ちてきた。


「!!」


 嘘だろこいつ! 階段中央の吹き抜けから落ちてきやがった!


 しかも上で見たときよりも更にでかい! 俺の手のひらの半分くらいのサイズになってるし、ドス黒い雰囲気はさらに増大して、見ているだけで恐怖心と嫌悪感と嘔吐感がこみ上げてくる。


「こっち! 早く!」


 アヤはそう言いながら我先に走っていく。俺を置いて逃げようとするその背中に愛情は感じられない。この女との結婚はやっぱりありえないな。


 俺たちはマンションを出たところですぐさまタクシーを拾うことができたので、虫が来るより先に移動できた。


「アヤ、財布持ってきてるか?」

「持ってきてるわけ無いでしょ」


 俺も財布は持ってきていないが、タクシー代はスマホでも支払えるから便利になったもんだ。


 そしてこの女は一銭も持っていないのにタクシーに飛び乗った。完全に俺の懐を当てにしている行動で、事前相談がなかったことにも腹が立つ。


 きっと結婚してからもこうやって身勝手に金を使われるんだろうと思うと、ますます白けてくる。


 何を隠そう、寄生虫のように俺の家に転がり込んでいるアヤとは別れようと思っていた矢先だった。なのによりによってこんな厄介事を持ち込んでくるなんて。もっと早く別れておくべきだった。


「……」

「……」


 アヤが務めている研究所の住所を告げた後の車内は無言だった。しかし、どうしても確認したいことがある。


「アヤ、誰かに恨まれたりしてないか?」

「知らないわよ。なら聞くけど、あんた浮気してない?」

「ふぁ!?」

「あんたの浮気相手が私を怖がらせるためにあんなの送ってきたんじゃないの」

「ないと思うんですよ」

「どうして敬語よ」


 実際はアヤと別れた後のことを考えて、すでに別の女に声はかけてある。その女はもうひと押しすればすぐに落ちる自信があるし、アヤより良い女であることも間違いない。だが、付き合ってないし肉体関係もないので「浮気はしていない」と言い切れる。ただ、保険をかけているだけだ。


 しかし、俺に非があるような別れ方はしたくないので、アヤの方に転嫁する。


「むしろ、お前のことを狙っているストーカーとか」

「私は研究一筋であんた以外に出会いなんてないんだけど」


 確かに、俺たちが出会ったのは共通の知人から紹介してもらったからなんだが、そうでもしないと日夜研究に没頭しているアヤと知り合う機会はなかっただろう。


 そんなアヤが俺に隠れて飲み歩いたり浮気している可能性は低い。俺と共通の知人がアヤと同じ研究所に勤めているので、怪しい言動があればその情報はダダ漏れになるからな。


「だけど冷静に考えたら、どこでどう私を見つけてストーカーになるかなんてわからないわね」


 駅や電車の中で見かけた時、道を歩いている時、エレベーターで一緒になった時……。例え一言も話していなくても、目線すら合ったことがなくても、思い込むやつは思い込む。


「それにストーカーかどうかもわからないし」

「どういう意味だ?」

「虫入りの汚いガーゼを送りつけてくるようなやつよ? 好きアピールじゃなくて嫌がらせじゃない。だからあんたの浮気相手が私を怖がらせるためにやったんじゃないかと思ったわけよ」

「浮気なんかしてないけどな」


 そう。浮気はしていない。キープしているだけの状態だ。


「じゃあ、あんたのストーカーという可能性もあるんじゃない? そいつにとってあんたと付き合ってる私は邪魔者だから」

「そうかもしれないけど、ここで推測を重ねても意味ないだろ。それよりどうして研究所に行くんだ?」

「うちで作ってる粒子加速器にあの虫を閉じ込めちゃえば出てこれないと思ったのよ。完全に密封されてるから」

「へぇ」


 アヤは粒子加速器の説明をしてくれたが、よくわからない。とにかく荷電粒子を加速する装置らしいが、なんのために加速させているのかはさっぱりだ。


 俺は「部外者の俺が入っていいのか」とか「どうやって虫をその加速器の中に入れるのか」とか色々質問したかったが、それよりも脳裏に焼き付いているあの虫の姿に気持ちが悪くなってしまい、口を閉ざした。


 タクシーで小一時間移動した先にある大きな施設。そこがアヤの務めている会社の研究所だが、俺はタクシーに乗ったまま待機するように言われてしまった。


 アヤは研究所に入ると、数分後に一抱えする大きなランタンシェードのようなものを持ってきた。


「簡易加速器よ。これの中にあれを入れてしまえば完全密封されてるから出てこれないと思う」


 入る、かな?


 最後に見たやつの姿は手のひらサイズに逼迫していた。今頃どんな大きさになっているのかは想像したくもない。


 アヤはタクシーの運転手に新たな行き先を指示した。


「ん……、今の住所、どこ?」

「私の実家。ここから三十分くらいだから」


 その言葉通り、三十分くらいでアヤの実家に着いた。


「ここよ」


 これが実家?


 岬に近い岸壁に建った朽ちた廃屋。柱と壁と屋根の一部が倒壊しているので住める状態ではなさそうだ。


「三年前の台風で壊れちゃって。親は別の所で暮らしてるのよ」

「なのに、どうしてここに?」

「まだ電気は生きてるし、ここなら他人に迷惑かからないでしょ」


 俺には迷惑かかってると声に出そうになったが、押し黙るくらいの処世術は心得ている。アヤも俺も被害者であって、迷惑をかけているのはどこかの誰かなのだから矛先を間違っちゃいけない。


「どうやってあの虫をそれの中に入れるんだ?」

「なんとか捕まえて」


 アヤは真顔だ。


 俺は嫌々ながらにアヤに言われるがまま家探しし、荒んだ庭の納屋から虫取り網を見つけだした。こんなものであの虫を捕まえられるのか心細いので、台所があったと思われる場所で包丁を探す。


「キャッ!!」


 機械の動作を確認しているはずのアヤから悲鳴がしたので、慌てて戻ると、俺の背中におぞましい悪寒が迸った。


 まるで明かり一つもない森の完全な闇の深淵を覗き込んでいるような怖れが湧き上がってくる。これは人間がどんなに歳を重ねて世の中を知っても拭えない、生き物として魂の奥底に必ずある「死への恐怖」そのものだ。


「は、早く捕まえて!」


 アヤが指差す方を見るとあのドス黒い雰囲気をまとった虫が―――いや、もう「虫」ではない。


 それはウシガエルのような爬虫類の姿になっていた。しかしその造形には虫の部分も多く残っていて、謎の進化を繰り返してきたことがわかる。


 そして俺の手のひらよりデカくなっているのは間違いない! あんなもんを虫取り網で捕まえられるのか!?


「早く!」


 加速器がウィィィンと甲高い音を出す。


 それを合図にしたのか、やつはぴょんと跳んだ。動きがいちいち気持ち悪い!!


 どうやって捕まえる?


 俺たちの住んでいたマンションから相当な距離離れていたのに、短時間でここまで追いついてきた相手だ。常識や物理法則が通じるとは思えない。


 常識外の知識と言えば、子供のころに祖父から早九字という魔を払うおまじないを教えてもらったことがあるな。やれるだけやってみるか!


「臨兵闘者皆陣列在前……」


 指先を鉄砲のような形にして横と縦に空間を切るようにする。


「なにやってんの!」

「神頼みだよ! なんの神様か知らないけど!」

「いいから早くしなさいよ!!」


 ヒステリックに叫ぶアヤの切れた表情を見て、やっぱり結婚した後の将来が想像できた俺は「マジでこいつとの結婚はないわぁ」とゲンナリしたが、それはそれ。今はあれをどうにかしないと。


 恐る恐る近づいて、今にも飛びそうなそれを網の中に入れる。


「あれ……」


 案外すんなり捕まったし、身動ぎすることもない。


 虫の時のように潰したらどうなるのかと一瞬頭をよぎったが、さすがにこの大きさの生き物(?)を潰す気にはなれない。


「持ってきて!」


 いちいち金切り声を上げる様が心底嫌になってきたが、俺は言われるが、ままおぞましい気配を垂れ流しているカエルもどきをアヤのところに持っていった。 


「ここにいれて」


 加速器とやらの上で網を振り、中にいるものを落とす。と、同時にアヤはすぐさま蓋を閉じて加速器をフル回転させた。


「ふふ」


 え? どうしてアヤは笑っているのか。


 ここで俺は「どうして電源を入れる必要が?」と冷静になった。


 潰しても死なないアレを密封された容器の中に閉じ込める意図なら、わざわざ加速させる必要はないんじゃないか、と。


「家庭用の電圧じゃ大したことはできないれけど」

「お前、何しようとしてるんだ」

「あれ、この世のものじゃないんでしょ? 加速器に掛けたらどうなるのかと思って」

「お前、バカなのか!?」


 加速器がガタガタと振動を始めた。


 アヤはその振動に何らかの異常を感じたらしく、慌てて離れると俺の後ろに回った。完全に俺を盾にするつもりのようだ。


 俺たちはゆっくり後ずさり加速器から距離を取る。


 その加速器が爆音と共に弾け飛ぶまで大した時間はかからなかった。


 そして弾けた加速器からこれまで以上にドス黒い雰囲気が溢れ出し、とてもあの機械の中には収まりきれないはずの「なにか」が這い出してきた。


 関節の動きを度外視して動く女のような細い腕。そこから肩と頭、そして上半身がズルズルと出てくるが明らかに人間じゃない。


 人の形をしたこの世ならざるもの。


 そして俺は、あの呪物が人の姿にまで成長してしまったことを知り、絶対に勝ち目がないことを本能で悟った。


 腰が抜けてへなへなとその場にしゃがみ込んだ俺を突き飛ばすように、アヤは逃げていった。運動は苦手と言っていたがすげぇ速さで走れるじゃないか、ちくしょう。


 人の形をしたこの世ならざるものが目の前に迫る。


 駄目だ。あれを見るな。俺を素通りしてアヤの方に行け!


 俺は必死にまぶたを閉じて石のように動かないことを選択した。


 それからどれだけの時間が経過しただろうか。体感では何時間もじっとしていたつもりだし、怖気のようなものは肌に感じない。


 ただ海の音と風が草を揺らす音だけが聞こえてくる。


 終わったのか? 俺は何もされていないので、あの化け物はアヤを狙っていたということだろうか。


 だったらよかった。どうせ別れるつもりだったし、あいつの性格があれだから呪われたんだろう。ザマァない。


 俺はゆっくり、うっすらとまぶたを開けた。


 セーフ! 目の前の足元にやつのドス黒い存在感はない!


 安堵しながら完全に目を開けたら、俺の背後から頭上越しに逆しまになる格好で、俺の顔を覗き込んでいる「やつ」と目が合った。







「なぁアヤ。前の彼氏とはどうして別れたんだい?」


 スーツが似合う新しい彼氏の自宅。その広いリビングでワイングラス片手に軽く質問されたが、これは日常会話を装った身元調査だと感じる。


 今までの男性遍歴とその付き合い方と別れ方から、私という人間の本質を見抜こうとしているのだろう。


「自然消滅よ」


 嘘は言ってない。あんな超自然現象に見舞われて消滅したんだから。


「きっと浮気でもしていたのよ。結婚しなくて良かったわ」


 そのおかげて、あいつよりグレードの高い男も見つけられたし。


 それにしても、あの呪いの最終形態まで生きていたのは前の男だけだったわね。大体の男が序盤の虫に触れただけで死ぬはずなんだけど。


 本当は一週間くらいかけて呪いの力を増して人間の姿になるんだけど、あいつはなんだか不思議な力があったせいで呪い殺せるか不安だったから研究所の粒子加速器で呪いを増幅させてみたけど、大成功だったわ。


 いずれ私は呪いや思念も加速させることができるという事実を科学的に実証してみせる。そのために男に寄生して実生活の面倒を見てもらい、研究に没頭しているのだから。


「ああ、そうだ。今日うちの宅配ボックスに荷物が入っていたけれど、アヤ宛てだったよ。持ってくるね」

「私?」


 私はまだこの家に寄生していない。それどころか前の男の家に荷物があるし、家賃未納で退去を求められるまで居座ってやろうと思っていたくらいだ。


 それに私がここにいると知っている人はいない。いるはずがない。


「ほら、これなんだけど」


 差出人は前の彼。そしてこの「包み」を見て私は嫌な予感しかしなかった。










 --------

 作者:注


 これ、自分が見た夢をもとに書いたので、ここから先はないんですよね。さーせん。


 そして夢ってマルチバースで行われた別の自分が体験した事実なんですってよ!

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