第2話 ワタシの彼 1

今、ワタシは最近付き合いはじめた彼とイタリアンを食べに行く途中です。今思うと、なんでこんな男と飯を食べなきゃならないのか、自分でもわかりません。そもそもワタシは最近離婚したばかりで、すべてをリセットしたかったので、たまたま友人に誘われたお見合いイベントで、元旦那と真逆の男を無意識に探していたんです。たぶん、魔が差したんでしょう。

そして、もっともその条件に合ったのが、今ワタシの右手をそっと握り、ワタシより2センチくらい背が低く、頭のてっぺんが寂しく、素朴で真面目そうな今の彼ということです。

彼はワタシがバツイチなことは知らないし、

愛してもないということも知らない。

ただ、こんな人でもいいところがあるかもしれないというある種の好奇心はあった。

だから、今のワタシにとって元旦那意外なら

誰でもよかったんです。でも、それにしてもよりにもよって、こんな男を選ぶくらいワタシは病んでたんだとつくづ後悔しています。

さっき迄居たイタリアンもパスタまでは我慢したけど、彼の話がつまんない上にゲームオタクときてる。びっくりしたのは、帰る途中で公園のベンチでいきなりキスしてきたこと。もうドン引き。そして、今ワタシを自分の部屋に誘ってきた。どうしよう、キモいし怖いな。え?今ワタシがうつ向いたのを勘違いしたの?なんで「ありがとう嬉しいよ」て

まさか、ワタシが同意でもしたと思っているの?冗談じゃないわ。

でも、ワタシがダメなところは、相手に対して本音を絶対言わないということ。つい、思いとは裏腹に対応してしまう。自分でもダメなことはわかってるけど、相手を怒らせるのが怖いし、それが、自分自身を守ることにもなってきたとも思う。

ああ、どうしよう、このままだと部屋に連れ込まれちゃうわ。

ワタシの手を握っている彼の手は汗でべとべと。ああ。助けて。

結局ついてきちゃったダメなワタシ。

部屋は意外に片付けていた。一応ほめてみた。しかし、それよりなんとかここを逃げなきゃ。たぶん向こうはその気よね。でも、こんな男とする気はない。言う?言っちゃう?

怖いな。えい!

「えっと。ワタシ。そんなつもりじゃないんです。て言うか、嫌なんです。そして、キモいんです。すいません。さようなら。」やっと言えた。早く逃げなきゃ。







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