幕間

その洋服屋から開放される頃には、要の足は既に棒切れになっていた。陽葵に連れ回されては着せ替え人形にされ、売り場と試着室を何往復したかは、三からは数えるのをやめた。要の服に加え、陽葵が目についたものも追加で試着していたため、両手の指で数えれるか危うい。


陽葵は普段要が決して着ないような派手なピンク、黄色、黄緑などの服を持ってきては着せ、肩を震わせて笑いをこらえていた。

要も初めは嫌だ嫌だと言ったのだが、この外出は陽葵へのご褒美という名目があるため、頼み倒されれば着るほかなかったのだ。そんなこんなで、要が想像していた五倍はカロリーを消費してしまった気がする。普段運動しないのだから尚更だ。ちなみに買い上げた商品はもちろん要が持っている。


「わたしがしたいことは終わったんですけど……これからどうしましょう?」

陽葵はこてんと首をもたげた。

スマホを取り出してみれば、時刻は三時を少し回ったところ。自宅まではそれほど離れていないため、まだ何かをする余裕はある。


何かないかとおもむろに辺りを見回すと、右隣にあるゲームセンターが目に入った。要が目を留めていると、陽葵もそれに気づく。


「あれは……ゲームセンター?ですか」

「入ったことあるのか?」

「ないです! この前テレビで『日本一のゲームセンター』ってのを見てたので」

そういえば陽葵が見ていたのを、要も横目で見た覚えがある。あのゲームセンターとは比べるにはあまりに小さく、ゲーム筐体の数も少ないが。

彼女は要に出会うまで知らなかったものも多い箱入りのお嬢様だ。ゲームセンターに入ったことがなくても、今さら驚かない。


「行ってみるか?」

「いいんですか!!」

キラキラと目を輝かせる陽葵を前にすれば、引き返す選択肢はあるまい。

はしゃぐ陽葵を追い、要もゲームセンターの方へ進み始めた。



――――――――――――――――――――――

今回短めですいません😭

次からはいつも通りの文字数になります!

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