閑話:クリスマス

今日の日付は十二月二十五日。知っての通りクリスマスだ。

窓の外は既に日が沈み、凍えるような気温となっている。ヒューヒューと窓を叩く風の音が、テレビの声に混じっていた。


「メリークリスマス!」

キッチンから戻ってきた陽葵は、大きな皿をテーブルに置いた。その上には、幾本ものフライドチキンが乗っている。ゆらゆらと蒸気がのぼり、食欲をそそった。


「なぁ、頭のこれ、取っちゃだめか?」

「だめです!」

要は自分の帽子の先を摘んだ。

今要が被っているのは、サンタの帽子だ。「雰囲気づくりです!」と陽葵が持参したものである。もちろん陽葵の頭にも同じものが。


「ていうか、こんなものどこから持ってきたんだ? わざわざ買ってきたのか」

「違いますよぅ! わたしでもこんな幼稚なもの買いません!」

「ノリノリでつけてる癖にか」

「あったからですー!」

陽葵は首をぶんぶんと振って否定した。それにつられ、帽子の先端も揺れている。

要が無言で先を促すと、陽葵は口を開く。


「お姉ちゃんが数日前に送ってきたんですよ、郵便で」

「……なるほど」

にわかには信じ難いことだが、本当のことである。



二日前、二十三日。陽葵が家でゴロゴロしていると、いつも鳴らしている電子音が鳴った。宅配便のようだ。


荷物を受け取ると、送り主の欄には「神原紅音」の文字。性格にそぐわない丸い字で書かれている。


箱を開けてみると、紅白の色味が目に入る。

「なんだろう……」

取り出したのは、二つのサンタ帽だ。先端にはもこもこたとした綿のようなものがついている。

「かわいい!」


陽葵は黄色い声をあげた。しかし箱の中の紅白は、まだ残っている。


「なにこれ……服?」

掴みパッと広げれば、それはコスプレ用の衣装だった。先程の帽子とは違い、一人分しか入っていない。


「な……なぁ!」

陽葵は狼狽した。

そのサンタの衣装は、少々過激なものとなっていた。大きく開いた胸元に、短すぎるスカート。陽葵が着るにはサイズピッタリだが、さすがにこれは着る気になれない。

その服を畳まず箱に戻すと再び封をし、押し入れの奥にしまった。



「……てことがあったんですよ!」

「ほう」

陽葵は事の顛末を話した。もちろん、例の過激なコスプレのことは伏せてだが。


「あっ、外見てください!」

陽葵に倣って窓の外に目を向けると、なにやら大粒の白いものが空から降りてきている。


「おっ、雪か」

「ホワイトクリスマスですね!」

今日の気温は例年より低い。地面も冷えているだろうから、もしかしたら積もるかもしれない。明日の朝は少し早く起きようと、陽葵は密かに決めた。


「ささっ、冷めないうちに食べましょう! 召し上がれ!」

「おう、いただきます」

要と陽葵はアルミホイルの部分を掴むと、要は大口を、陽葵は小ぶりな口を精一杯開けてかぶりついた。

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