第二章 渇望

 おうじようは外観通り『年代物』ではありそうだが、内部は手入れが行き届いているようだ。

 かべてんじよううるしりだろう、しつほう彿ふつとさせる深みのある黒色に染まっている。そして天井は金の羊のそうしよくふちどられており、黒い世界を羊たちがけていく様が生き生きとえがかれている。この部屋の大きさは三十平米くらいだろうか。ベッド以外はだんぐらいしかないところからして単なるきゆうけい室なのだろう。だが、この部屋だけ見ても建築技術の高さがうかがえる。なお、部屋のすみに置いてあるアイアンメイデンについてはこうりよしないものとする。こわいから。

 私がそんな風に室内を観察していると魔王さんがベッドから立ち上がった。

「わっ!」

「ん?」

「いや、……なんでもないです……」

 分かっていたことではあるが、そうやって立たれるとその大きさにおどろく。目の高さにこしが入ってくる。魔王さんは私の横をとおけて、部屋のとびらを開けた。

「あっ」

「なんだ?」

「……あの……」

 新しい職場で早々に放置されるのは厳しいものがある。しかし、ついていっていいのだろうか。指示待ちの部下はいらないとこくひようされはしないだろうか。

「ああ、そうだったな……来い」

 私の気持ちが分かったのか魔王さんがそう言ってくれたので、ありがたく魔王さんの後に続いて部屋を出た。扉の先は大理石でできたろうが広がっていた。一方には扉が並び、もう一方には窓が並ぶ。全体として暗く、窓の外や廊下の先は全く見えない。

 そんな廊下を魔王さんが歩きだすと、壁にかかっていたしよくだいいつせいに火がともった。

「わあ……」

 明るくなると、そこはごうけんらんな世界だった。

 壁や天井はしつくいづくりのようだ。天井には天使がうフレスコ画が描かれている。まどわくや天井を縁どるようにここでも金細工が走る。ここのモチーフは城門のものと同じく人とけものが合わさったキメラのモチーフだ。それらもらしいが、特にステンドグラスの窓はフィレンツェの教会のもののようにしきさい豊かで見事だ。細かくパーツが分かれていて細部まで描かれている。一番近くにあったものに近寄ってじっくりと見る。半魚人のようなモチーフのそれはうろこひとつひとつにパーツが分かれ、なおかつその鱗のパーツも一色ではなくグラデーションになっている。

「早く来い」

「あ、はい」

 もう少し見ていたかったが呼ばれたので魔王さんに駆け寄る。

 というか、魔王さんの手招きスチル最高にれいだったので、ダウンロードさせてほしい。いやむしろ全てのしゆんかんが最高なので、私にまばたきしなくていい眼球をください。

 などと思いながら、魔王さんの後ろを『走る』。

 魔王さんは歩くと右足のブーツが、カツと音を立てるのに、左の異形の足は音を立てないのでとくちよう的な足音になる。カツ、……、カツ、……。ゆっくりとしたリズムだ。カツ、……、カツ、……、カツ、……。ゆうゆうと歩いている魔王さんの後ろを全力で『走る』。

 これは魔王さんがいやがらせをしているわけではなく、私が走っていないと追いつけないためだ。その理由は明白で、魔王さんと私の身長差は軽く六〇センチメートルはある。さらに言えば胴と足の比率も全くちがう。たしかに私は身長が低い方だが、それにしたって差がひどい。しかも私は裸足はだしだ。やたら目立つ音が鳴ってしまう。カツ、……、カツ、の間にぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぐらい鳴っている。

「小さいな」

 魔王さんが足を止めてり向いた。

 私が思っていたようなことを魔王さんも思っていたようだ。情けない。

「申し訳ありません……」

「なにをあやまる? 小さいなら小さいでやれることがあるだろう。……が、そうだな、……」

 魔王さんは右手であごを押さえて私を見下げた。その灰色のひとみがきらりと光る。

「っえっうわ!?」

 急に視点が高くなった。かんに足元を見ればローラースケートぐつ

「どうだ?」

「えっ!?」

「無理か? 車輪がついていれば速く移動できるかと考えたんだが」

 こてんと首をかしげるその愛らしさたるや、まさに天使である。

「あ、りがとうございます!」

「別に……部下の能力を最大限引き出すのがおれさまの役目だ」

「神様なのかな?」

「魔王だが?」

 さも当然のように魔王さんはそう言ってきびすかえし歩きだした。その後ろをついていこうと足をす。

「ぎゃっ!!」

「どうした!?」

「いやっちょっうわっ」

 かしゃかしゃと足が勝手に地面をすべっていく。なんとか体勢を整えようとしたがこらえきれずにべしゃんとしりもちをつくことになった。

「……」

 落ちたちんもくさる視線に、背中に冷たいあせが流れていくのが分かる。

「ト」

「違います! できます!」

「……そうか」

 いたわるような声を打ち消し、急いで立ち上がろうとした。

「うぎゃっ」

 今度は顔からたおれた。

「……」

 ──また、沈黙が落ちている。

 両手に力を入れてなんとか腕立て伏せの姿勢を取る。かしゃかしゃと両足が滑っていくが気合で立ち上がろうとした。

「ふぎゃ!」

 今度は横に倒れた。

「……トール」

「できます!」

「……落ち着け」

「魔王さんがくださったものを、私が使いこなせないはずがありません! ぎゃっ!?」

「そこは否定していない。とにかく落ち着け」

「うわっ! いてっ! 違います!」

「……」

「せめてっ! せめて立ち上がりますからお待ちをっうわっ!」

 もがいていたらとつぜん、体がいた。

「トール」

 魔王さんにわきかかえられていた。死者の腕が回ったおなかがひやりと冷える。

「無理するな」

「無理などっ」

「自分を正しく評価しろ」

 言われた通り正しく、客観的に、自分の行いを振り返る。ローラースケートはつちようせん成人女性がもがき苦しみひっくり返る。ないわ。引くわ。両手で顔をかくす。

「……ごめんなさい」

「謝ることではない。道具にも改善が必要だろう。……ゆっくりやっていけばいい」

 そうして、魔王さんは私を抱えたまま、カツ、……、カツ、……と歩き始めた。

 指のすきからその顔を見る。無表情で歩いていく魔王さんはこの世のものとは思えないほど美しい。燭台のあかりで照らされ、そのゆうのようにしろはだに温かなだいだいかげが落ちている。この至近きよで見ても毛穴がないのはどういうことなのだ。

「あの、魔王さん」

「なんだ」

 重くないかを聞きたかった。しかし、この状態になったのは私の足があまりにもおそいためだ。そしてそれを打開する方法がない。運んでもらう以上のだいたい案を提案できない以上はな問いかけでしかない。言う価値がない。だから開けた口を閉じると、魔王さんは足を止めて「ん?」と私の顔をのぞき込んできた。

「聞きたいことがあるのか?」

 え、やさしすぎない? 天使かな? まつめっちゃ長いな? 天使だ(確信)。

「あー、……この城って、……この城『は』どんくら……この城は『どのくらい』広いん……この城って、どのくらい広いのですか? ああっ!」

「話しやすいように話せ」

「いえ! ちゃんと話します! 可能な限り!」

「まあ、好きにすればいいが……」

 魔王さんは少し考えるように目をせた。

「広さか。……分からないな。外から見るより広いことはたしかだ」

「へ? 魔王さんのお城ですよね?」

「俺様はこの城を所有しているわけではない」

「魔王城なのにちんたいってことですか?」

「それは、……言い得てみようだな。この城は借り物だ。この世界の外から借りられている」

「世界の外? ……他の層ってことですか?」

 ラピワルの設定にもとづいて聞くと、魔王さんは真面目な顔でうなずいた。

「これを見たことがあるか?」

 魔王さんが燭台を指さした。『金』の燭台だ。

「き」

「このような色の鉱石は見たことがないだろう? この城にはこのような不思議な素材のものが多く使用されている」

「……あ、はい、そうですね」

 驚きをのどおくで飲み込む。

 どうやらこの世界では金が産出されないらしい。余計なことを言うところだった。

 魔王さんは私のどうようには気が付かなかったようで燭台を見つめていた。

「俺様も本で知ったことだが、この城は最下層の異形の層から最上層の神の層までつながっているらしい。だが同時に、この城をのぼり続けても下り続けても別の層には辿たどかなかったという記録もある。……ただひとつたしかなのは、今、この世界にいる者ではこの城は作れない」

「……魔王さんはどうお考えなんですか?」

「どこかの世界の者が全ての世界をつなげた。おそらくはここよりも上の層の者だ。下の層の生き物にこの城が作れるとは思えない。それにこの世界から上の層へはつなげられないだろう。上の層の者を落とすことすらできないのだから」

「落とす? ……あ。下の層の異形や死者は呼び出せても、上の層の天使や神は呼び出せられないってことですか?」

「そうだ。……知らないのか?」

「いえ、魔王さんならできるのかな、と……」

「そんなことができた者は今までいない。……いつかはできるかもしれないが……」

《──こちらに落ちてこい》

 たしかにあのとき聞こえた。あれはだれの声だったのだろう。

「……、上の層にはこの世界にないものがある、ですか……」

 そしてそのひとつが『金』。

 もしも魔王さんの考えが正しければその上の層は『現実』であり、この城は『現実』の者が作ったことになる。でもそんなことありえない。だってこの世界は『まん』だ。今はきっと私が見ている『夢』だ。……そのはずだ。

 コツリと魔王さんが歩く音が続いていく。あのときよりはゆっくりとしたリズムだがあのときと同じようにとうかんかくに続いていく。カツ、……、カツ……と時間が進んでいく。

 ──あのときさんざきはなにを考えていたのだろう。

 そもそもあいつに私を殺す理由がない。あいつなら口八丁だけで私に全ての責任をし付け、けいという合法的な殺人だって選べたはずだ。自分で手を下すなどという危険をあえておかす理由がない。もし『殺す』ことが目的ではなく『落とす』ことが目的なら、……もしもここが『夢』ではなく全てがつながっているのだとしたら、……この世界が『現実』の『下』にある世界だとしたら……今のこのじようきようそのものが実崎のおもわく通りで……実崎はここで私になにかをさせるつもりなのではないだろうか……。

 いや、やっぱりありえない。そんな鹿げた話があるものか。り落とすかき落とすか選べと言ってどっちもやるようなサディストだ。私ぐらい特別な理由なく殺すだろう。

 それに私はもう、あんなやつの部下ではない。

 ここが『夢』であっても『現実』であっても、これから先は魔王さんのことだけ考えればいい。そう決めたのだから、……それだけでいい。

「……難しかったか?」

 魔王さんが沈黙していた私の顔を覗き込んできた。あわてて思考を切り上げる。

「いえ、分かりやすかったです。魔王さんは上の層からこの城を借りているんですね」

「あくまでも仮説だがな。世界をつなげて、いいことがあるとも思えない。ただ……この世界にとってはありがたいことだ。この世界には魔王城が必要だからな」

「え? 世界に魔王城が必要なんですか?」

 魔王さんの目が少し大きく開いたが、すぐにつうの美しい目にもどった。

「とにかく俺様もこの城についてはあくできていないことが多い。広さもそのひとつだ。他に聞きたいことはないのか?」

 魔王さんが早口でそう言うので、次の質問を考える。

「え? ……えーっと、どこに行……、どちらに向かわれているのですか?」

 なんとかひねりだした質問に「ああ」と魔王さんが答えてくれた。

「この城は中心のとう以外に六基の塔がある。ここは二の塔……平たく言えばごうもんせつだ」

「ごうもんしせつ」

「お前は部下なのだからこんなところにいなくていい」

「あ、はい」

「それに俺様もあまり立ち入らない区画だ。なにが出てくるかよく分からん」

 あまり使ってないのか。やはり魔王さんは天使だった。

「だから俺様が普段使っている中心の塔に向かっている」

「魔王さんのお住まいの! 聖地!」

「聖地? いや、魔王城だぞ」

「私が入ってもよろしいのですか!」

「ああ。部屋はいくらでもある。ここには俺様しかいないし、……好きに使うといい」

 と、魔王さんが言った瞬間に大きくゆかれた。前方からごうおんとともに、『なにか』、来た。

「魔王さん、あれ……」

 私が『なにか』を指さすと魔王さんはろんげに『それら』を見た。

「俺様も把握していない城の規則がある。死にたくなかったらうろちょろしないことだ」

「好きに使えないですね……っていうか死んじゃいますよ!」

 大量の推定三メートルえの岩が前方からごうそくで転がってきている。魔王さんは慌てることなくひとつため息を落とした。そして、──んだ。

「うぎゃっ!?」

「使う分には好きにしたらいい。安全は保証しないというだけだ」

「なるほど! うわあっ!? 魔王さんはいつも正しいです! ひェ!」

「当然だ」

「ぎゃあっ!」

 なんでもないように岩をピョンピョンとえながら、魔王さんは「お前はすぐに死にそうだな」と言った。私は突然かかってきた重力せいをあげることしかできなかった。


***


 辿り着いたのは原作にもびようしやがある『玉座の間』だった。

 体育館ぐらいには広く天井も高いのに光源は少なく、中央にかれたじゆうたんの周りにポツポツと燭台があるだけだ。まるで地下室のように暗く部屋の隅や天井などはよく見えない。大きな柱が十本ほど建っており、それらにはもがき苦しむ無数の人間のちようこくがされている。ロダンの「ごくの門」のようだ。うすぐらいためにしようさいがよく見えないことが怖さを倍増させている。子どもだったら泣きそうな部屋だ。

 中央に敷かれた絨毯は暗い赤色を基調としており金糸で様々な植物が描かれている。その絨毯の先には、五段の低い階段がありその階段の上には真っ黒な玉座がちんしている。

 魔王さんは原作通りその王座にゆったりとすわり、死者の腕でほおづえをつく。かんぺきに演出された絵画のように整ったその姿に、ほう、とため息がこぼれてしまう。

 一方の私は、階段の下で、魔王さんが玉座の奥から出してくれたふかふかのクッション付きの小さなに座っている。魔王さんは玉座のとなりに椅子を置こうとしてくれたのだがきようしゆくすぎて階段の下に置いてもらったのだ。

「トールよ」

「はい」

 魔王さんが私を見下ろした。

 その灰色の瞳は底までけている湖のようにわたっている。まつさえこおごつかんの森で見上げた月のように静かで優しくて美しい。

「それで?」

「はい? なんですか?」

 私が首をかしげると、魔王さんは目をかがやかせ始めた。

「それで、……お前はどうやってここまで来たんだ」

「起きたら階段のところにいました」

「運ばれて来たのか?」

「そこはよく覚えていなくて……」

おくがない、と」

「あ、はい。それです」

「ふむ……道理でな……」

 魔王さんはなつとくしたのかかんていをやめた。鑑定している間の光っている目はれいだけれど、鑑定しているのが丸分かりなのは少し使いにくいスキルかもしれない。魔王さんが私に向かって左手の人差し指を差し出す。その指先が青色に輝き美しい模様を宙に描き始める。もしかしてほうじんだろうか。なにをするつもりなのだろうと見ていると、魔王さんのせいかんな額に、はらりと子どものようにやわく細いかみがかかった。それに対し、魔王さんはけんしわを寄せうつとうしそうに頭を振った。どうやらはたにはくるおしいほどたん御髪おぐしであっても、本人にとってはじやでしかないようだ。

 だったら結べばいいじゃないか。あ、片手では結べないのか。

「魔王さん、髪を結びましょうか?」

「……なんだと?」

「御髪を整えましょう」

「……俺様のか?」

「はい、ごめいわくじゃなければ」

 魔王さんはあきれたようにため息をき、魔法陣を描くのをやめてしまった。なんだったのだろうとは思ったが「好きにすればいい」と言われたのがうれしすぎてどうでもよくなった。「はい!」と返事をし、椅子の上にローラースケート靴を置いて裸足で階段をのぼる。玉座の横に回り「失礼します」と声をかけると、魔王さんは目を閉じた。好きにしろという意だろうか、それにしても睫毛が長い。

 そっとその黒髪を手に取ると、さらさらと指からげていく。まさに絹糸のような髪だ。

「ひとつに結びますかね?」

「どうでもいい」

「かしこまりました」

 スーツのポケットからヘアクリップを取り出しブロッキングをする。前髪から後頭部に向かって編み込みを作っていく。魔王さんは顔に髪がかかるのがかいなのだろうから、運動してもほどけないように少しきつめに編んでいく。ある程度編んだら逆側に回り同じように編み込みを作っていく。そこまで作ってから、玉座の背もたれが邪魔で魔王さんの真後ろから御髪を整えられないと気が付いた。どうしたものかとなやんでいたら、察してくれた魔王さんが首を動かしてくれた。

「ありがとうございます!」

「……」

 ブロッキングを取り美しい髪をひとつに結び、編み込んだ髪を結び目に巻きつける。短い髪が混ざっていないおかげで綺麗にまとめることができた。

「できました!」

 魔王さんは何度か頭を振って、「いいな」と言って、こちらを見た。

「よくやった」

「あ、りがとうございます……」

「俺様は片手がこれだ、あまり細かい作業はできない」

 もふもふの手を見せて魔王さんが少し笑った。

「お前はこの左腕の代わりをしろ」

「っはい! はげみます!」

 やっぱりそのがおは他の全ての事象と比べ物にならないぐらい尊かった。

「じゃあ、あの! 食事作りますか! あっ本を読み聞かせいたしましょうか!」

「本ぐらいひとりで読める……」

「じゃあ! ぬいぐるみを編みましょうか!」

「いらん」

「あっレースでマントを編みますか! 魔王さんに似合うものを作りますよ!」

「いらん」

「えっと、あっ、よしよししますか!」

「なんだそれは……いらん……」

「世界ほうかいさせてきますか!?」

「やめろ!」

「えっと、じゃあ……」

「……食事は、気になる、が……」

「はい! すぐに作りますね!」

 キッチンはどちらにと聞こうとした瞬間に、足が勝手に動きだした。

「にゃっなにっうぎゃっいやあああっ! なに!? 魔法か、これは!?」

「落ち着け!」

 正確に言えば足ではなく、椅子の上に置いてきたはずのローラースケート靴が私の足を包むように出現して勝手に動き始めたのだ。魔王さんがとつに背中を支えてくれなかったら靴に引きずり回され腰が死んでいただろうから、やはり魔王さんは最高だった。

 靴に強制連行された先はキッチンだった。

「……こんな教え方ないだろ、靴よ、お前に口がないばかりに分かり合えないのか……」

「……だいじようか、トール」

「はい……」

 ぷにと魔王さんの手が私のほおをつついた。その温かさでくるまいのような気持ち悪さが消えた。大きく息を吐いてから魔王さんを見上げる。

「魔王さんはなにが食べたいですか?」

「そうだな……、肉がいい」

「分かりました! 肉という肉を焼きましょう!」

 魔王さんは私の返事に目を丸くし、それから仕方なさそうに笑ってくれた。

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