第71話 王国視点

「降伏せねば……降伏しかあるまい……」

「ふむ……ですが今降伏したとしても、父上が生き残る保証はほとんどありませんよ?」

「なっ⁉ だが今ならばまだアルンが勝手にやったと……」


 崩壊した王城の一室、国王と第二王子ロキシスがアルンの様子を眺めていた。


「盟約を破った王、しかも破ったのは血縁の王子……まるで助かる要素がないと思いますが?」

「ぐ……」


 国王は往生際の悪い男だった。

 大きなトラブルが起こることもない王国では、部下の主体性を尊重する良君としてやっていけていたのだ。

 日和見主義かつ、自己保身が最優先のわかりやすい国王は、部下である大臣たちにとってみればありがたい存在だった。

 実際ここ数十年は、それで大きな問題なく回っていた。


「くそぅ! それもこれも金欲しさにあの財務卿が勝手に!」

「それを止めるのが王の仕事でしょう。父上はまさか、あの玉座に座っているだけで望む結果全てが手に入ると思っておいででしたかな?」

「ぐっ……」


 息子であるロキシス第二王子の言に何も言い返せない国王。

 その全てが図星だった。


「まあご安心ください。沈みかけの船ですが兄上と私が来たのです」

「だが……」

「ご覧になったでしょう? 私の人口魔獣たちを!」


 自信満々に腕を広げるロキシス。


「確かに見たこともない数の魔獣たちであった……」

「数だけではありません。その性能も、レインフォースが代々飼いならしてきたような雑魚とはまるで違うのです」


 得意げに笑うロキシス。

 その様子に少しだけ、不安になっていた国王が気持ちを持ち直す。いや、持ち直してしまったのだ。


「そうか……そうじゃな。お前が言うのなら信じようではないか」

「ええ。所詮は王家のための駒に過ぎない飼育係が調子に乗ったらどうなるか、見せて差し上げますよ」

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