第68話

ミリアが決断してからの動きは早かった。

 まず戦争と聞いて鬼人族が立ち上がる。


「今度こそやってやろうじゃねえか!」

「おお! 俺たちの力、人間に見せつけてやんぞ!」

「うぉお!」


 セキを中心に血気盛んな鬼人族は、結局集落にも話を付けて一〇〇にのぼる軍を結成した。


「仇……うちたい!」

「もうおでらは家族みてえなもんだ!」

「ボクもいかせて!」


 直接被害を受けたホブゴブリンを中心に、ゴブリン、オーク、コボルトの進化種族たちが立ち上がる。

 その数三千。


「戦線に行かせてくれよ! 斧振らせりゃぁ人間の若造なんかにゃ引けを取らねえぞ?」

「まあ駄目っていうんなら、ちょっと待ってくれ」

「ああそうだ。とびっきりの防具と武器を用意してやる!」


 ドワーフたちに応えるようにエルフたちや母さんも、素材集めや服の手配に気を回してくれた。

 シャナルとエリンは食料関係や移動のための馬なんかの世話に気を回してくれていたし、すでにロビンさんの傘下に入っていた鬼人族の斥候も敵の情報収集に動いている。

 そこにパトラを始めとするドラゴンに、ラトルのような魔獣たち……。

 そして……。


「キュルルー!」

「クエー!」


 神獣二体。


「過剰戦力にも程があるな」

「まあ実際に戦わせる気はないけど」


 これはあくまで、国と国の決まりに背いた王国に対する報い。

 ロビンさんにはすでに王都からの移民の受け入れを始めてもらっている。おそらく危険が及ぶのは王都までだが、周囲一体の領地も注意はしている。


「王国が滅びたらどうなる?」

「領主がそのまま国を起こすか、周りの国に飲み込まれるだろうね」

「その周りの国には当然、ユキアの国も含まれるというわけか」


 レイリックの言う通り、おそらくこの戦争で領民は増えるだろうな……。


「では残る者たちにその準備をさせておかねばならんな」

「まあ、土地が増えるからどんどん任せていきたいところだけどね……」


 元々王なんて柄じゃないしな……。

 と、いまは目の前のことに集中しないとだな。

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