第64話 敵襲
「すでに我が国より戦力は大きいな……」
「当たり前ですが、ゼーレスの全盛期の戦力も上回っています」
レイリックとミリアがつぶやく。
「いやぁ、こんないるとは思ってもみなかった! ドワーフの国よりも多いぞ!」
「鬼人族俺たちのとこももちろん……」
書き出して改めて、この領地が異常な状況にあることを理解する。
「さて兄さん、どうするんですか?」
「そうだな……まずある意味一番数の多いゴブリンが肝になるから……手先が器用な希望者をドワーフの職人に弟子入り、力に自信があるなら鬼人族と一緒に、みたいな感じでまとめていこうと思――」
そこまで言ったところで、慌てた様子で二匹のホブゴブリンが駆け込んできた。
あれは……ロビンさんのもとで執事見習いをやってた……。
「た、大変です! 敵! 敵襲です!」
「何だとっ!?」
真っ先に立ち上がったのは鬼人族たち。
「状況を詳しく伝えてくれ! アドリ! 指揮を預ける! 先行して戦えるものを向かわせてくれ! セキ! 現場の隊長は任せるぞ! 鬼人族五人を連れてアドリの補佐をしてくれ!」
「わ、わかりました兄貴!」
「やってやろうじゃねえか!」
俺も説明を受けながら現場に向かった。
話によれば何者かの魔法で突然、森一帯を焼き払われたという。
相手の規模はわからないがとにかく早く知らせるために飛び出してきたらしいのだが……。
「父ちゃんが……父ちゃんが……!」
「……」
報告に来たホブゴブリンは泣いていた。
その悲痛な叫びを、俺はただ聞いていることしか出来なかった。
◇
開拓領地に定めた最南端。
そこはゴブリンやコボルトたち、小型の亜人たちの住居区になっていた。
俺たちがはじめて到着していたとき、すでにゴブリンたち馴染んでいたためそうしていたものだが、拠点防御という観点で言えば全く何の備えもない状態だった。
アドリの提案で城壁の建設や、種族間の住居入れ替えなどがすすめられてはいたのだが……。
「これは……」
ホブゴブリンの道案内で到着したとき、すでに周囲に敵影はなく、ただただ無残に焼き払われた集落がそこにはあった。
「ひどい……」
「シャナル、怪我をしてるやつらに回復薬を」
「はい!」
すでに現場で救護の指揮を取っていたアドリが駆けつける。
「すみません兄貴……俺がもっとちゃんと準備していたら……」
「いや、俺のミスだ」
俺はもともと狙われる身だったんだ。いままでは俺自身の身を守ることを優先させようと動いてきたが……もっと優先すべきことがあったはずだった。
家族を失ったホブゴブリンたちの悲しみは、人間のそれと変わりはないのだ。
「ユキア。悔やむより次に進むことが王の役割だ」
レイリックがあえて冷たくそう言ったのがわかる。
「ああ……」
静かに決意を固める。
まずは怪我をしているものを助けて、被害の確認。
その次は……。
「ここに手を出したことを、後悔させる」
「そうだな。ここに手を出した者たちの末路を思うと、いまから哀れだな」
レイリックの言葉に同意するように、周囲にいたホブゴブリンたちもうなずいていた。
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