第62話 鬼人族との決着

 その後カイゼルにもう一度宴会を開かれてしこたま手土産と、大量の職人をもらってここに至るんだが……。


「ミリアといったか、下がっていたほうが良いぞ」

「えっ?」


 レイリックが注意を促してくれたおかげで周囲の人間が一歩引いたのが見えた。

 だが鬼人の王は一瞬も怯むことなく突進してくる。


「死なないでくれよ」


 鳳凰の権能は【聖炎】。

 ちょうどあの火山で、こいつの身体がそうであったように……。


「なっ!?」

「腕だけにコントロールするだけで手一杯なんだ。手加減は本当に出来ないからな!」


 俺の右腕の先が炎に包まれる。

 いや、実際に炎になるのだ。

 そしてその炎は、並の魔法とは比較にならぬ、神獣の放つ聖炎。


「やってみろやぁああああああ!」


 ひるまず突進してきたゴウマに、すれ違いざま炎と化した右腕を打ち込む。


「ぐぁっ!?」


 ようやく、一騎打ちが終わった。


「あちぃじゃ……ねえか……」


 ドスンと、ゴウマの巨体が地面に落ちる。


「良かった。死ななかったか」


 次の瞬間。


「王よ。先程の無礼をお許しください」


 ザッと俺の周りで膝をついて拳を合わせる鬼人族の村人たちがいた。


「これより貴方が我らの王、なんなりとご命令を」

「先程の件、処分はいかようにも……」

「この場で腹を切ることもためらいはありませぬ」


 そこはためらって欲しい……。

 文化の違いというのはこうも複雑なのか。

 そんなことを考えていたら……。


「ユキアさん……!」

「ミリア様。間に合ってよかったです」

「申し訳ありません……」


 沈んだ表情を見せるミリア様にどうしたものかと思っていたが……。


「ユキア。女の相手も王のつとめだが、今はやることがあるぞ」

「なっ!?」


 レイリックのからかいに俺ではなくミリア様が真っ赤になっていた。


「おい……」

「良いではないか。初な娘は好みではないか?」


 もう何も言うまい……。


「あー、鬼人族にはうちの領地に協力を願いたい。この領地での生活ももちろん保証する。街道を整備してゆくゆくはここまで一つの国として守りを固めたいと思うが、良いか?」

「仰せのままに」


 すっかり大人しくなった鬼人族たちにペースを乱されながらも、とにかくこれで一件落着のようだった。

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