第60話 ドワーフの国②
「ああ、若いほうが感性が合うだろうて、二百歳くらいまでの技術者を出そうじゃぁねぇか!」
肉を頬張りながら顔と同じ程の大きさの大ジョッキでエールを煽るカイゼル。
城下は完全にお祭り騒ぎだった。
「ありがとう。こちらからも定期的に食料と木材を持ってこさせるから」
「やはり余の目は狂ってなかったようだの! 末永く仲良くやっていけそうだ」
「人間の寿命は短いけどな……」
「頑張ってあと二百年くらいはやっていってほしいものだのぉ。ふぁっふぁっふぁ!」
豪快に笑うカイゼル。
酒が入って一層上機嫌だった。
「にしても木材か。たしかにこの辺一体は鉱山地帯だが……火は困ってないと思っていたがな」
レイリックがツッコミを入れる。
するとカイゼルがそれまでの上機嫌な表情を一変させ、深刻そうにこう言った。
「そうだ。ここは元々火の精霊に愛されてた洞窟だからのぉ。これまでは木材が少なくても何とかなっておったが……」
「精霊を怒らせたか?」
「怒らせたのは余ではない。あの馬鹿鳥だ!」
カイゼルが叫ぶ。
すると周囲から同調するようにこんな声が上がった。
「そうだ! あの鳥をなんとかしてくれりゃあまた俺たちも鍛冶が捗るってもんだ!」
「ああ! あいつがなんとかなるってんならうちのエース出しても良い!」
「うちの工房は直接代表ごといってやらぁ!」
「おめえはとっくに二百過ぎてんだろうが!」
「あぁっ?! まだ若いのには負けてねえよ! 飲むか!?」
「やってやろうじゃねえか!」
気づいたら酒飲み勝負が繰り広げられる。
本当に陽気なものが多い場所だった。
「で、馬鹿鳥ってのは……」
察しがつかないこともない。
この地域で精霊に影響を与えるほどの鳥なんてそう……。
「鳳凰だろうな」
レイリックが代わりに答えていた。
「そのとおり! そうだの……人間の王、ユキアよ。お主なら何とか出来るのではないか?」
「それは……」
「出来るぞ」
「おい」
俺が答えるよりはやくレイリックが返事をする。
「ふぁっふぁっふぁ! よーし! 礼は弾もうではないか! あれをなんとかしてくれるんならうちから定期的に工芸品も武器も防具も作って送ってやろうぞ!」
カイゼルが上機嫌にそう言う。
レイリックを睨んでも後の祭りだろう。
「霊亀は封印されてたから出来ただけだぞ!?」
「心配せずとも霊亀の力なら問題ないだろう?」
「はぁ……」
こうなった以上仕方ないな。
とりあえず今は肉を食らって、その件は明日の俺に任せるとしよう。
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