第59話 ドワーフの国①
「ここがドワーフの国か」
「相変わらず洞窟なんて湿っぽいところにこもってるというのに、随分と賑やかなことだ」
レイリックの案内で到着したのは、領地よりも更に北の山岳地帯だった。
その一角、知っている人間でなければまず辿り着けないであろう場所に、ドワーフの国の入り口はあった。
「で、どこに向かうんだ?」
「決まってるだろう。王が二人も来たんだ。相手の王に会わなければ礼を失するというものよ」
「俺は王をやってるつもりはないんだけどな……」
ともかくレイリックの案内でずんずん洞窟の奥地へと進んでいく。
本当にドワーフは陽気で、俺たちは何度も露天商に呼び止められながら歩いていった。
レイリックの姿を見てドワーフの女性も頬を染めたりしていたので、美意識は共通している部分もあるのかとか考えながら歩いていると、最奥に城門が見えてくる。
「門番がいるな」
「ああ。だがあれは知り合いだ」
レイリックがスッと前に進み出て門番と何かを話す。
笑い合っているところを見ると本当に知り合いのようだ。すぐに中に通された。
「随分親しげだったな」
「すでに百年以上の付き合いだからな。行くぞ」
感覚の違いに戸惑いながらもとりあえず門番に連れられて王城を目指した。
◇
「よく来たな。エルフの王よ、人間の王よ」
「久しぶりだな。壮健そうで何より」
「ふむ……エルフは本当に変わらんものだな。それに比べれば余は随分衰えたものだ」
何を言っているのだろう。
玉座に座るドワーフは白髪の髪や髭こそ見たことないほど立派なものになっていたが、その肉体に関しては衰えどころか……。
「相変わらず冗談が好きなようだな、カイゼル」
「百年前に比べればこれでも衰えてきておるのだ。若い頃はまだやれた」
「わかったわかった。お互い暇じゃないんだ。要件を伝える」
「つれないやつだのぉ。まあ良い。要件はそちらの人間の王が持ち込んだものと見るが……?」
筋骨隆々のドワーフ王、カイゼルがこちらを品定めするようにじっくり観察したあと……。
「ふぁっふぁっふぁ。良い目をしておる! 良かろう! 要件を飲もう!」
「何も言ってないのに!?」
「お主から余が損する条件が引き出されるとは思えん! そうと決まれば宴だ! おい! エルフと人間の王が相手だ! ここ数百年で最も盛り上がる余興を用意せよ! 宴会じゃ! 祭りじゃ! 民にも酒を振る舞ってやれぃ!」
豪快に笑うカイゼルの指示で、さっきまでじっと佇んでいた騎士や大臣たちもにこやかに準備に駆け出していった。
「相変わらずだな……」
「これがドワーフってことか……」
思った以上に陽気な相だった。
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