第58話 鬼人王ゴウマ

「これが鬼人の王の力か……」


 霊亀は顕現させずともその権能を使うことが出来る。

 霊亀の権能は鉄壁。

 鬼人の猛々しいラッシュも、霊亀の発動した視えないなにかに阻まれ、こちらに届くことはない。


 だが……。


「どうしたぁ? 若き魔王よ! 守ってばかりじゃ勝てねえだろうが!」


 防戦一方。

 攻撃手段はあるにはある。大量の魔物をテイムしたことによって俺の筋力は人間の割にはかなりの強さになっているのだ。

 だがそれは、あくまでも人間の割には、だ。


 力を重要視する幻の部族である鬼人、その中でも一際大きなこの鬼人王ゴウマとの力比べは、少し分が悪いように感じられたのだ。


「そうか……攻める気はねえってか。だったらこっちもちと、本気でいかせてもらおうか」

「――っ⁉」


 ゴウマのオーラが一気に跳ね上がる。

 あれは……。


「防御を捨てたか……いや、防御は要らぬと判断したのだな」


 後ろで俺を眺めるレイリックが言う通り、相手は防御の一切を捨て、突進の構えを取っていた。


「行くぞ?」


 ニヤリとゴウマの顔が歪む。


「仕方ない……」

「諦めるか?」

「いや……まぁそういう捉え方もある」

「あぁ?」


 困惑の表情を見せたゴウマ。

 俺はここに来るまでに得た力を使う決意をした。


「加減が出来る気がしないんだ……死なないでくれよ」

「ちっ……舐めたこと言ってくれる……だがそれが驕りでもなんでもねえってことは、俺には伝わってるぜ」

「なら良かった」


 ドワーフの国で得たのは大量の工芸品や酒などの特産品、そして領地に対する協力者たち。

 だが、それよりも大きなものがあった。

 それが……。


 ――鳳凰


 霊亀と並ぶ四獣の一角。

 あの力を使えばこの一騎打ちに終止符を打つのは容易いだろう。


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