第53話 出発前①【ミリア視点】
「竜人が相手だとどうなるのでしょう……?」
「こちらも似たような形で、宝石類の価値が私たちにとってのそれより高いのです」
だが鬼人以上に気難しい相手であるという情報もあった。
なるべくなら鬼人のほうがありがたい、というのが現時点での感覚だ。
「鬼人に竜人……存在すら把握していませんでした。その交渉術まで……さすがですね」
「いえ……たまたま知っていただけです」
シャナルさんに褒められて面映い気持ちになる。
私ですら半信半疑だった文献から読み取っただけの情報だ。
全てが正しいとは思わないが、こちらから交渉に持ち込む価値はあると判断する。
「鬼人か竜人であれば問題なく彼らの統率と書類整備も可能かと思います。場合によっては数の少ない彼らに労働力を提供し、こちらは統率者を得るということもできるかと」
「それは良いかもしれませんね」
ゴブリンたちにとっても良い経験になるはずだ。
その中から将来的に活躍する者も出てくるかもしれない。
「では行ってこようと思います」
「一人で行くんですか⁉」
「まあ……私には従者もいませんし……」
「でしたら私めがご同行させていただきましょう」
音もなくさっと現れたのは……。
「ロビンさん!」
レインフォース家に仕えていた執事……。
ユキア殿から凄腕とは聞いていましたが……これは……。
「身の回りのお世話と、簡単にではございますが万が一の際には武術の心得も少々ございますので」
少々、というがあふれるオーラは騎士団の隊長格以上のものだ。
只者ではない……。本当にここは……。
いや、そんなことを言っていても仕方ないだろう。
「ご迷惑をおかけします」
「いえいえ、お気になさらず」
人の良い笑顔を浮かべたロビンさんとともに、記憶の中の地図を思い起こす。
すると出番が来たことを理解したかのように、白竜のパトラが飛んできて近くに静かに着地した。
「きゅー」
「パトラ。よろしくね」
「そういえばミリアさんにはこの子がいたんですね」
「ええ……」
元々はレインフォース家で管理していた子なので少し後ろめたい気持ちがある。
それを察したようにシャナルさんが笑いかけてくる。
「兄さんのことなら心配しないでも大丈夫ですよ。ちょっと兄さんは特殊というか……テイムしてる子たちも先祖から引き継いだくらいの認識しかなかったので、つながりが普通のテイマーより弱いんですよね」
「あー……」
シャナルさんの言うことは確かにわかる。
ユキア殿はテイマーとしての考え方が特殊ではあった。
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