第51話 参考【ミリア視点】
「この中から現場のまとめ役を選び、育て……最終的にはあの書類を自分たちで完成できるようにしないといけない……となると……」
オークはもともと力は強いが知能はあまりないと言われている。
上位種であるハイオークやジェネラルオークなどになっても基本的には力が全てという種族だったはずだ。
トロールも似たような傾向にある。
ゴブリンはもともとがずる賢いと言われており、ある意味では知能に期待はできるが、きっちりと仕事をこなすかと言うとそのずる賢さ故に怪しさがある。
ホブゴブリンやマジックゴブリンであればある程度は期待できるが……。
傾向としてはコボルトも同じような感じだ。
「人型でない相手も含めて検討しますか……」
エルフの協力もあって植物系の魔物なども多くいる。
場合によっては魔獣系でも書き物はともかく統率力は優れているし……。
「シャナルさん」
「はい?」
私はなにかに迷った時、その分野で一番頼りになる存在を頭にイメージして助言を乞う。
今回助言を乞うべきは間違いなく、ユキア殿だ。
「ユキア殿ならこの子たちの中からどのように選ぶと思いますか?」
王宮にいたときは離れていたとはいえ、シャナルさんは家族。
ユキア殿のことなら私なんかより遥かに理解していると思ってそう聞いたのだが……。
「兄さん……ですか。おそらくですが、区別せずに全員をテイムして全員に読み書きを覚えさせようとするでしょうね……そして実際それをやってのける気もします……」
「それは……」
聞いた私が悪かった。
ユキア殿のことを誰よりも把握しているからこそ、シャナルさんの口から飛び出すそのとんでもないことは妙に現実味があるのだ。
普通なら信じられない話でも、ユキア殿を知っているとまあやりかねないと思うだけの何かがあった。
「兄さんを参考にして良いことなんてありません」
冷たく突き放すようにそう言うシャナルさん。
「シャナルさんは、ユキア殿がお好きなんですね」
「なっ⁉ どうしていまの流れでそんなことをっ⁉」
「ふふ。ユキア殿のことを話すときのシャナルさんの表情を見ていればわかります」
それが妹としての感情なのかは一旦置いておくとして、だ。
「そんなに顔に出ていたでしょうか……」
「大丈夫ですよ。普通は気づかないでしょうから」
「そうですか。まあ鈍感な兄さんが気づくはずはないのでそれは良いのですが」
「そうですね」
そのとおりだ。
それに気付いたのは私だったから。私も同じ感情を持っているからだ。
あとは気付くとすれば……。
エリンさんあたりが怪しいくらいのものだろう。
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