第43話 次の目標

「ユキア、お前の故郷は……」


 帰り道、ミリア様には聞こえないようにレイリックが俺に耳打ちする。

 使い魔たちの移動ペースに合わせながら、俺たちは空からドラゴンで移動していた。


「わかってる」


 レイリックの言いたいことはわかる。

 もうあの国は終わりだろう。

 人質として連れてきたミリアが唯一、あの国から救い出せた人間かもしれない。


 王国は背後こそ森を超えても山岳地帯という環境だったが、北側以外は複数の国と面している。

 これまで王国はそれらの国々に対して、武力で対抗することで優位な関係を築いてきている。

 その力が竜騎士団、そして騎馬隊、ダメ押しに魔物を従えているという王都の騎士団だった。

 武力で対抗してきた王国の牙は、俺が漏れなく回収してきたのだ。


「どうする? まさか保護するつもりは……」

「ない」


 それは断言できる。

 王国が滅ぶのは自業自得。それは揺るがない。


「だが積極的に動くつもりもないか」

「まだ、ね」

「ほう? 考えがあるのか?」

「一応ね」


 考えはシンプルだった。

 王国を滅ぼすよりも、王国の優秀な人材を登用する機会を得たほうが良いと考えたのだ。


 王国を武力制圧することは簡単だ。

 今いる戦力で踵を返せばたちまち再起不能の大打撃を与えられるだろう。

 隣を飛んでいる竜一匹で王城は半壊から全壊へと、総戦力ならば王都の戦力は文字通り全滅させられるだろう。

 だがそれでは王国の人間は周辺諸国に散り、俺たちは徒に広大な土地だけを得ることになりかねない。


 そもそも事実上降伏宣言とも言える条件で契約した相手を武力で滅ぼせば周辺諸国が団結するいい口実を与えることにもなる。

 だからこの、見かけ上背後にエルフの国がある状況をうまく利用するのだ。


「土地だけ余っても人がいないとどうしようもないからね」

「なるほど。人材流出の受け口になるか」

「そうだね」

「では次にやるべきことは……」

「ああ」


 レイリックと笑い合う。


「単純な数以上に、まずは質を集めたい」


 というより単純な数はすでにかなりいるのだ。

 ゴブリンやオークなどを統率して土木工事や兵としての運用なんかができるのが理想だった。

 要は優秀な人材が集まる場所を作ればいい。


 次の目標は領地開拓だ。

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