第39話 崩壊した王国
「これは……思ったよりひどいな……」
「国として機能しているのか?」
ついて来てくれたレイリックが口を開けてその様子を眺めていた。
降り立った庭園には人の気配がない。王城はもはや半分が倒壊しておりいまはもう雨風をぎりぎり凌ぐ程度の役割しか果たしていなかった。
人の気配はあまりないが周囲に魔物たちが残っている気配はある。
そして周囲には戦った痕跡と思しき血痕が大量に残され、さながら地獄絵図になっている。幸いにして人も魔物も動物も、この場に死体が転がっているようなことがなかったわけだが。
「国の話で言うとレイリック、本当にこっちに来て良かったのか?」
「良い! それより私なしでこの男と二人旅が良かったのか?」
「ひっ……」
道中もレイリックに気圧され続けたエレインは馬車の隅で小さく固まっていた。
「まあそれは確かに助かったけど……」
霊亀を従えてからエルフの国、ユグドルを抜けてくるにあたってレイリックはほとんど逃げるように出て来ている。
「霊亀を従えてもやっぱ怒られてたもんなぁ」
「じいやの小言を聞いておったらお前の寿命が尽きるからな」
冗談とも本気とも言えないレイリックの言葉に苦笑していると、馬車からエレインが転げ落ちて来た。
「貴様らももう終わりだ! のこのことついて来……え……?」
崩壊した城を見て固まるエレイン。
「そんな……私がここを出たときは大した被害など……どうして……」
なるほど。
エレインが行くまでは無事だったということか。
「ユキア……」
「ああ」
無人の廃墟のようになった王城の庭園。
俺とレイリックは同時に魔物たちが近づいてくる気配を感じ取っていた。
遅れてエレインも足音に気づいた。
「ひぃっ?!」
現れたのは──
「久しぶりだな」
「なるほど。これがユキアの魔獣たちか」
「いや、ほとんど先代以前がテイムしたものだよ。俺は世話してただけだ」
「その割にずいぶん懐かれたな」
最初に飛び込んできたグランドウルフを筆頭に、魔獣、ドラゴン、動物たちが続々俺の周りを取り囲んだ。
遅れて人の気配もようやく近づいてくる。
気づけば王城からぞろぞろと見覚えのある顔ぶれが現れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます