第38話 霊亀(精霊体)

「と、その前にこの子の紹介をしておこうか」

「キュルル!」


 ずいぶん可愛らしいことになった霊亀をシャナルたちと、ついでにエレインに見せる。

 エレインは若干息苦しそうにしていたがそれを気遣うものはここにはいなかった。


「可愛いですが……先程の話を聞くとこの子は神獣、霊亀なんですね」

「はぁ? 馬鹿な。そんな神話の存在を信じているのか? お前の妹は。兄に似て頭が──がはっ⁉︎」


 レイリックの手が出た。


「よく喋るゴミだな?」

「貴……様……ぐっ⁉︎」


 片手で首を持ち上げられて足をバタバタと暴れさせるエレイン。


「死なない程度で頼む。さてこの子のことだけど……」

「ええ……いいんですか、兄さん」


 若干顔をひきつらせてシャナルが言う。


「良いさ。流石にシャナルまで馬鹿にされたのは頭に来てるからな」

「そうですか……」


 シャナルは少し顔を逸らして短くそれだけ応えていた。

 その様子を見ていたアドリがこう漏らす。


「兄貴があんな恐ろしい顔してるのに微笑むシャナルさん……すげえっす……」

「あう……」


 ちょうど限界を迎えたエレインが地面に落とされてたところだった。


「この子は霊亀だけど、元の姿があまりに大きくてとりあえず精霊化させてこの姿になってる」


 改めて精霊化した霊亀を紹介する。

 胴体は小さな亀のようなフォルムではあるが、それよりも目立つのは身体の数倍の長さがある尾だ。

 先端に深緑の宝石のようなものをつけた美しい尾だった。


「可愛い……」

「この姿なら自由に動けるからね」

「キュルー!」


 ひと睨みで身動きすら取れなくなったあの威厳は今はないが、それでもうちに秘める力に気付くものは気付く。


「はんっ! こんなわけのわからんもんを神獣などと馬鹿らしいにも程が……ぁ……え……?」


 気付かない馬鹿は霊亀が直々にわからせることになっていた。

 姿こそ変わることはないが、それでもそのオーラが別物に変わった。


「なるほど……本物ですね」


 エレインがまた呼吸困難に陥る中で、シャナルが冷静にそう言い放っていた。

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