第40話 崩壊した王国②
「ユキアさん!」
「ミリア様……よくぞご無事で」
「ええ……この子が守ってくれました」
ミリア様のもとには1匹の白竜の姿があった。パトラか。
なるほど……。調教済みとはいえドラゴンをテイムするに至ったのか。
「おお! エレイン……! なぜそんな姿に……」
次に声を上げたのはアイレンだった。
「父上! 見てください! やはりこの男の指示でこいつらは暴れたのです!」
エレインが息を吹き返したようにそう叫んだ。
「やはり貴様が……! この被害! どう責任を取るつも──」
「王はいるかな?」
アイレンの言葉を遮ってレイリックが前に出た。
「無礼な……え、エルフ……?」
アイレンにとっても思わぬ相手だったのだろう。
勢いが落ちる。
「小者に吠えさせているとどんどん立場が悪くなることに気づかぬか? ここには仲裁役として来たのだ。このままでは貴国は滅ぶぞ」
そういうことか。
レイリックはこの問題を国家間の戦後処理として扱うつもりだ。
そうすることで俺の領地はエルフの後ろ盾を持った国家として周辺諸国へもアピールされる。
俺個人としてやりとりするよりもはるかに建設的な話もできるだろう。
ただムルトさんから逃れるために付いてきたのかと思っていたが意外と考えていたらしい。
「王が出る必要などない。これは我が国の問題。宮廷に仕える身でありながら国家に反旗を翻した愚かなテイマーを処罰すれば済む問題だ。貴殿の出る幕ではなかろう」
現れたのはビッデル財務卿だった。
「お前のようなものではやはり話にならんな」
取り合うつもりのないレイリック。
仕方ない……俺も喋るか。
「俺はもう国外追放された身。救援要請を受けてやっては来たが、責められるいわれはない」
「何をぬけぬけと! 王宮をこれだけ無茶苦茶にし、我々が細々と地下に隠れ住むような惨めな思いをするに至ったのだぞ! その魔獣たちがお前を前にすれば大人しくしておるのだ! お前が国家に反旗を翻した! それ以外にこの状況をどう説明する!?」
ビッデルの声に周囲の貴族も同意を示す。
その中には勝ち誇った顔をするアイレンと、いつのまにかそちらに駆け込んでいたエレインの姿もあった。
「そうか……」
もはや話し合いのできる相手ではないのなら……。
「その結末がお望みならそうしてやるのもやぶさかではないな」
──ズドン
「は? な、なにっ!?」
「あれは……馬鹿な……」
「なぜこんなところにあの災厄が……?!」
肩に乗っていた霊亀に顕現してもらった。
ボロボロになった王城にはそれだけのスペースがあったのだ。
「俺が反旗を翻したというシナリオがそちらにとって都合がいいのなら、これから俺の従魔に暴れてもらうが、良いんだな?」
俺の言葉を受けて霊亀がビッデルをはじめとした敵対貴族を睨みつける。
「ひぃっ⁉」
それだけでその場にいた貴族たちは皆腰を抜かして地面に転がった。
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