第36話 出来損ないの使者①
「あ! 兄さん……すみません、王国から使者を名乗るものが現れ……私では……って、待ってください何ですかその肩に乗った不思議な生き物は」
拠点に戻った途端、シャナルがそう言いながらこちらに駆け寄ってきた。
「使者か……」
「ほう。どんな馬鹿が来たか見に行こうか」
「レイリックは大人しくしててくれ……」
「兄さん! 無視しないでください! これは……え、まさか本当に霊亀を……?」
シャナルが信じられないものを見る目でこちらを見てくる。
「あとで紹介するよ。今は先に……」
「そうでした。こちらに……」
シャナルについて行く。
前回の急ごしらえの応接間かと思えば、すでに俺がいた頃からは考えられないほど建物が増えている。
森の木々をうまく利用して立体的に構築された建物たち。木がまるでそのために成長したように見えるのはもしかするとアドリとエリンが手伝ってくれたのかもしれないな。
その一つ、比較的広い建物の前でシャナルが止まった。
「中でエリンさんとアドリさんが対応してくれていますが……」
「とりあえず話を聞くさ」
使者として来ているということはまぁ、ある程度ちゃんとしてるだろうし王国の考えを知るには良いだろう。
「入るぞ」
待ち受けていたのは……。
「来たな……この大罪人め!」
興奮した様子でそう叫ぶエレインだった。
◇
「終始この様子で……あとエリンさんに言い寄って嫌がられています」
「はぁ……ありがとう。大変だったな」
「いえ……」
シャナルは外行きモードはあるとはいえいつもの俺への対応と同じく塩対応であしらうことができるが、エリンは難しかっただろう。
「エリン、アドリ、ありがとう。二人とももう下がってくれて良いよ」
「ほっ……」
「兄貴! 無事だったんですね!」
二人がそれぞれ胸を撫で下ろしていた。
だがエレインはそれが気に食わなかったらしい。
「おい! 勝手なことをするな! このエルフの子は俺が今……」
「ほう? お前が何だというのだ? 人間の小物よ」
「なんだ貴さ──うぐっ……」
レイリックが圧をかける。
言葉を発するどころか呼吸すら止められて慌てふためくエレイン。
その間にエリンたちを守るように建物から連れ出した。
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