第9話村を救うために

「レインフォース様といえばあの伝説の一族……! お力になっていただけるのであれば是非……!」


 村長は俺の話に前向きだった。


「意外でした。兄さんは何も考えずにただ助けるかと思っていましたが……」

「兄を何だと思ってるんだ」


 シャナルがそう言った理由もなんとなくはわかるが……。

 村長と話をするにあたって俺は二つ取り決めをしていた。

 一つは村で得る利益の一部を余裕ができてからはこちらにも渡してもらうこと。

 そしてもう一つは、俺が狙われている可能性を考慮した上で考えてほしいということだ。


「ですが本当によろしいのですか?」

「こちらの台詞でもあるけど……」

「いえいえ。来るかわからない刺客に怯えて目の前の機会を逃したとなれば村人たちにも先祖にも顔向けできません」

「そうか……」


 先祖……か。

 俺が利益の一部をもらうのは生活のためではない。

 レインフォース家は莫大な財産を持っている。おそらくそれは国内貴族の中でも有数の財力だという自負がある。

 だがそれは俺が生み出したものではなく、先祖代々がしっかりとその土台を作ってくれたからだ。


 俺もそんな存在になりたい。

 額は大きくなくても良いが、俺が死んでからも残るような、そんな何かを残したいと考えていた。

 ただまあ無理なくやってもらうのが大前提だけど。


「じゃあ改めて、村の困りごとを整理しよう」

「はい……目下の問題はやはり外部との交流です。もはや村には自力で王都にたどり着けるものはおりません……」

「昔は違ったのか」

「はい。馬車も持っておりました。そう遠く離れているわけではありませんし、定期的に村人に農作物と金をもたせて王都に向かわせ、色々とものを買って帰ったのですが……」


 村長の顔が曇る。


「街道事故、ですか」


 喋れなくなった村長の代わりにシャナルが言った。


「街道事故……?」

「何年か前ですが、馬車が魔物に襲われる事件があったと。そのせいで行商も北西の村は見捨てたと言われていました」

「そうだったのか」


 つまりあれは街道として機能していなかったということか……?

 いやそうか、王都から離れれば防衛拠点も見張りも全くいなくなっていたし……。


「あの事件以降村は衰退の一途です。幸いにして自給自足ができる環境ですが、農作物も魔物の被害が出てきておりますから……」

「ようするにこの周囲の魔物が問題なのか……」


 シャナルに目配せする。

 周囲の魔物がどの程度のものなのか見てきてもらおうと思ったが……。


「すでにやっていますよ。被害の原因はほとんどがゴブリンです。兄さんからすれば大した相手ではありません」

「そうか」


 なら……。


「え、兄さんまさか、周囲のゴブリンを全てテイムでもするつもりですか?」

「え?」

「いやいやまさかさすがのレインフォースご当主様でもそこまでは……」

「だめだったか?」

「「え?」」


 村長と妹、二人が声を合わせて口を開けていた。

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