第3話家族
「と、いうわけで申し訳ないけど国外追放になった」
久しぶりの実家。
代々王宮に仕える都合上王都に屋敷を持っていたレインフォース家の本邸に帰ってきていた。今家に残っているのは母と少し下の妹だけだが。
男兄弟がいなかったため俺に万が一があった時を考え養子をとったりもしていたが、すでに家を出て関わりもなくなっている。
使用人は数人いるが、広い屋敷を持て余していると言えた。
「貴方は仕事熱心だけれど……いえ、だからこそ宮廷のやり方には合わなかったのかもしれないわね……」
母さんは俺を責めるでもなくそう言った。
だが俺を心配させまいと気丈に振る舞ってくれている様子はうかがえる。
申し訳ないな……。
「はぁ……兄さんはいつかやらかすと思っていましたが……まあ一族郎党皆殺しとかにならなかっただけマシだと思いましょうか。国外追放は良いですが、行くあてはあるのですか?」
呆れながらも妹のシャナルは俺を気遣うような視線を送ってくれていた。
口調に反して表情は心配そうにしてるところが可愛いところだ。
「当てははっきり言ってない。ただ国外追放となった以上急いだほうがいい。多分ビッテルは暗殺者を差し向けるだろうし」
「そうですね……兄さんに万が一他国で活躍されたら立場がありませんし、そのくらいはするでしょう」
「ああ。だからとりあえず最短で国を出て、味方を作る」
「味方……あぁ……わかっちゃいました……」
俺が何をするか察したシャナルが頭を抱える。
母さんは微笑むだけだった。
俺は王都を北上し、未開拓となっている森を開拓して生活拠点をつくるつもりだった。
目的地ではあるが当てと言えるような状況ではないわけだ。
「ちょっと不便かもしれないけど、色々テイムして整備していけば未開拓の森も過ごしやすくなると思うから」
「わかってますよ。兄さんならそのくらいやることは」
「良かった」
ならやることをさっさと進めていこう。
「使用人たちに多めに給金を、ここからしばらく仕事がなくても生きていけるくらいには払ってあげて」
「わかりました……私と母さんを置いていくとは言いませんよね?」
「二人にも何かあったら怖いし一緒に行きたいと思ってたけど……」
「ならいいんです」
そう言うとテキパキ準備を進めるシャナル。
母さんも着いてきてくれるようだった。
そしてもう一人、辺鄙な森への旅に名乗りを上げた人物がいた。
「ご主人様。不肖ながら私めもご同行させていただいてもよろしいでしょうか」
「ロビンさん……」
ロビンさんは祖父の代から仕えてくれている執事。
確かにこれだけ深い関係にあれば危険が及ぶかもしれないな……。
「私めのことはご心配いただかなくとも、もともと老い先短い老人ですから……」
「さらっと考えを読まないでください……」
主人と呼ばれるに至った今でも頭が上がらない人だった。
「なにかのお役には立てると思うのです。是非に……」
「わかった」
役に立つどころではない。
ロビンさんがいるかいないかで動き方がまるで変わるほどの力を持っているのだから。
「はい。ではまず安全に国外へと至るルートを……それから馬車の手配はこちらの商人のもとへ向かわれるとよろしいかと」
「最初からこうなることに備えていたようですね……」
「買いかぶりすぎです。それでは……」
メモを渡したかと思うとさっと姿を消すロビンさん。
どこが老い先短い老人だというのだろうか。ロビンさんほどの腕なら執事どころか冒険者だってまだできるんじゃないだろうか。
というか……。
「ロビンさんみたいな人が暗殺者として差し向けられたら俺は死ぬな……」
底知れない恐ろしさを感じながら、言われるがままにメモにある商人のもとへ向かった。
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