第45話こびとたちは、今日もゆく
「トンテンカン、トンテンカン」
小人の大工の親方とその弟子、今日も鳥の巣の修復に忙しい
「トンテンカン、トンテンカン」
「おやびん、もうそろそろ鳩の巣の修復も終わりますね」
というと、弟子、嬉しそうに親方に水筒に入ったお茶を渡す
「おめえ、おやびんは止めろと何回も言ってるだろう?親方と呼べ」
「へい、おやびん」
親方は傍らの切株に腰を下ろすと、ぐびっとお茶を飲んだ
ここは小学校裏の森。小人たちの住む世界。人間は小人が結界を張っているので、入れない
はずなのだが・・・・
親方、「ふぅ~」っと休んでいると、なにやら視線を感じる
親方、きょろきょろ辺りを見回すと、なんと人間の少女が木の陰からこっそりと
こちらをうかがっている
「おい、娘、なんでお前、この森に入ってこれるんだ?
なにをしている?」
親方はびっくりして、そう娘に問いかけると、
娘、にっこりと笑い、近づいてきた
「へぇ、小人って、本当にいたんだ。本の中だけだと思ってたんだけど」
というと、娘、大胆にも親方の頭をちょんとつついた
「娘、生意気だぞ、これでもわしは大工の棟梁。ちょっとはうやまえ」
「ごめんなさ~い、でも、鳥の巣を修復してるなんて、粋なことしてるわね」
「娘さん、我々はプロ、頼まれれば、海を越え、山を越え、どこへでも行きますよ」
と、弟子が自慢げに言うと、親方、
「おまえ、海なんてみたことないだろう、適当なこと言うな」と注意した
「ところで、娘、なんでお前、この森に入ってこれたんだ?結界はどうした?」
「えへへ、だって私、魔女の娘だよ、結界なんてへっちゃらよ」
「なんだと、あの有名な魔女の娘だとは。ところで、なんの用だ?」
「私の勉強机がちょっと壊れてしまったの、直してくれない?」
というと、娘、とびっきりの笑顔をした
「それはいいが、お前、報酬は払えるんだろうな?」
「もちろんよ、なにを払えばいいの?」
「それは決まっている、どんぐり100個だ」
「うわ~、そうなら頑張ってどんぐり拾わないと」
というと、娘、そこらへんにしゃがみ込み、どんぐりを探し始めた
「おやびん、これから忙しくなりますね」
と弟子が言うと、親方、まんざらでもない感じで言う
「そうよ、俺たちはプロだからな」
「トンテンカン、トンテンカン」
こびとたちは今日もゆく
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