第46話詩的魔人

我は詩をこよなく愛する、道化

 

そう、我を人は詩的魔人と呼ぶ


めぐる季節を言葉にたくし、我は歌うよ、どこまでも


今宵、めくるめく闇の中にまたたく光を求め、


我は詩人、どこまでもゆく


「魔人様、もう夜中の12時過ぎましたよ、いい加減、寝てください」

そういうと、魔人の従者、黒猫がめんどくさそうに魔人に言う


「黒猫よ、今、いいところなのだ。もうそろそろ詩の女神が

 私を祝福して、言葉をさずけてくださるだろう」


魔人はそういうと、しきりに机の上のノートにペンで丸を書いている

「魔人様、そういいながら、もう3時間そうやって丸を書いていますよ」

黒猫はあきれたように、魔人を見つめると、ふぅ~とため息をつく


この魔人、王様のお抱え詩人として、職を得ているが、いまいち働かない

今日もこうして、依頼された詩が思い付かず、ノートに丸を書いている


我は、魔人、そう、世に言う詩的魔人


今日も言葉の神に祝福され、言葉の海へと旅立つのだ


旅のお供に黒猫をつれ、言葉の荒波を乗り越え、楽園へと至る


おお、朝日よ、我を祝福するというのか


その神々しい光で、すべてをあらわにすべし


そう、その光で世に真実を告げるのだ


魔人はこうやって愚にもつかない詩を歌い上げながら、

ノートにぐるぐる丸を書く


黒猫はあきれてこう言った

「魔人様、もうちょっとマシな詩にならないのですか?」


魔人、黒猫にそういわれると、シュンとして言った

「黒猫よ、そろそろ寝るか

 睡眠不足はすべての元凶だからな」


こうして、魔人と黒猫、心地よい疲れとともに深い眠りへと旅立った

依頼された詩はもちろん今日も全くできずに終わるのであった



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