第30話殺人事件

 仕事の帰り道、もう秋。暗くなるのも早くなってきた

真っ暗な中に街灯がポツンポツンと照っている

そんな中を家路を急いですたすたと歩く

人通りもない薄暗い住宅街の道が続く

 男はそんな中、ふとちょっと先に目をやると

なにやら人が倒れている

 ちょっとそれを観るとぞっとした

酔っ払いだろうか。男は倒れた人にかがみこみ、揺さぶってみた

「もし、もし、大丈夫ですか」

倒れている女性はうんともすんともいわない

男は女性の腕を取って脈を確かめるとそれはもう脈打っていない

男は焦った。私はどうすればいいのか

おもむろに携帯を取り出し、救急の電話をした

「もしもし、今女性が倒れています。脈がこと切れているようなのですが」

「ああ、それなら心配いりません。もう手遅れです」

男は耳を疑った。救急の処置をしないうちから、もうあきらめるとは

「あの、こちらに来てはいただけないのですか」

「はい、行きません。その代わり、警察がそちらに行くでしょうね」

男は救急の担当者の淡白な言い方に不快感があったが、

確かにもう死んでいると思うので、警察のお世話になったほうがいいと思いなおした

男はしばらく待った。するとピーポーピーポーとサイレンが聞こえ、

パトカーがやってきた。

 警官はパトカーを降りるなり、男に向かって逮捕すると言い出した

「お前、殺したな。逮捕する」

「ちょっと待ってくれ。私はなにもやってない」

「いいや、その手に持っているナイフで殺したのだろう」

驚いたことに、男の手にはナイフが握られていた

男は戸惑った。どうしてナイフを私が持っているのだ

警官は男に手錠をかけ、パトカーに乗せた


と、ここで、男は目を覚ました

部屋の窓からは朝日が昇っているのが見える

天気のいい朝だ

男は今までのことが夢だったと知った

「そうだ、夜遅くまで不条理小説を読んだせいで変な夢をみたのだ」

男はほっとすると上半身を布団から起こした

すると手元には血のついたナイフが落ちていた

男はひえっとおびえたが、

よくよく考えてみると、演劇で使った小道具だ

夜遅くまで本を読んでいると、翌朝は大抵不条理に満ちている

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