第31話悪魔見習い

 悪魔見習いは悩んでいた

最近、上司からの命令された任務をこなせていない

その任務とは、人間を絶望させるというものだ

絶望させた人間からは魂を奪うことができる

なので、悪魔見習い、今日もせっせとターゲットである

人間を探し回っているところである


ある寒い冬の夜、独りの男が部屋でくよくよ考え事をしていた

この男、ある女性に恋をしているのだが、告白できないでいる

今日も思いばかりが膨らんで、くよくよ思い悩んでいる


悪魔見習いはこの男に狙いを定めた

「そうだ、この男を絶望させて魂をもらおう

そうすれば、私は立派な悪魔に昇進できるぞ」


「ああ、胸が苦しい。この切ない思いをどうにかできないものだろうか」

男が机につっぷし、もんもんとしている中、悪魔見習いが現れた

「よう、人間、苦しんでいるようじゃな。絶望するか?絶望してるか?」

男は悪魔見習いを見るとかなり驚いたが、その悪魔見習いの姿を見ると

ちょっと嬉しくなった。なぜなら、悪魔見習いは美しい女性の姿をしていたからだ

「あなたはどなたですか?」

男は尋ねると、悪魔見習いは答えた

「私は悪魔見習いだ。お前を絶望させるためにきた」

悪魔見習い、来た理由をすんなり告げてしまうところが、甘い

男は、そんなことには驚かずに、美しい姿に見とれた

「あなたは美しい。どうか私と付き合ってください」

男はそういうと、手を差し伸べた

悪魔見習いはびびった。なんでそうなるのかと

「お前は別の女性に恋をしていたのではないのか?」

悪魔見習いはそう言うと、差し伸べられた手を払いのけた

「もう、いいのです。あなたが現れた以上、私にはあなたが全てです」

悪魔見習いは困った。男を絶望させるどころか、希望を与えてしまった

人間の男というものは、なんと浮気な生き物なのだろうか

悪魔見習いは、つくづく男というものが、単純なものであると思った

悪魔見習いはこの男の始末をどうするか悩んだ。そして言った

「そうであれば、付き合わないこともない

そうするかわりに絶望しろ。そうすれば、付き合ってやる」

男はそう聞くと、嬉しさのあまり躍り上がった

「分かりました。絶望します。そしてあなたと結ばれます」

この男、絶望というよりは、歓喜に満ちている

悪魔見習いは困りに困って、ずるずると付き合うことになった

この男と、悪魔見習い。結局は、いい夫婦になった

そして二人幸せに暮らした

この件により、悪魔見習いは悪魔見習いから降格されて

普通の人間となった

今では、二人仲良く一緒の墓に入り、めでたく成仏したということである

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