第28話堕天使
その天使は天界から追放された
なぜなら自分の職務に疑問を感じてしまったからだ
天使の職務とはよき人間を天国に導くこと
しかし、その天使はよき者だけが天国に行くことに疑問を感じた
善と悪の中間にいる、普通の人々
彼らをも、その天使は天国へと導いた
それを知った他の天使たちは、その天使を非難した
「君は節操がないのだよ。普通の者たちを天国に導いたら
天国の規律が乱れる。君は天国を汚す気か?」
仲間の天使にそう非難されると、その天使は返す言葉もない
しかし、その天使は自分の意志を忠実に実行した
「普通の人々こそ、救われるべきではないのか?」
その天使は人間を深く愛し過ぎた
時には良いことをし、時には悪さもする
そんな普通の人々への愛が、その天使を迷わせた
天界を追われたその天使は、とある街の公園へと降り立ち
そこのベンチに腰掛け、呆然と目の前をみつめていた
そこに独りの少年が現れた
その少年、その天使をみつめるとニヤッと笑った
「おい、お前。なんで羽生えてるんだ。キモイぞ
おれがそれをむしってやろうか?」
天使は少年を見つめると、ほほ笑んで言った
「少年、元気でいいなぁ。おじさんは病気なのだよ
だから羽が生えている。よければ、羽を取ってくれないか?」
「おっさん、いいよ。羽をむしってやるよ」
そういうと少年、力いっぱい羽をむしり取ろうとした
しかし、羽はなかなか取れない。少年はとっととあきらめ、
天使の隣にちょこんと座った
「おっさん、ごめんよ。その羽、とれないや」
天使はそれを聞くと、にっこり笑い少年の頭に手をのせた
「いいんだよ、少年。ありがとう」
「ところで、おっさん、ここで何してるの?」
「おじさんはね。仕事がなくなってしまったんだ
だから、こうして暇をつぶしているのさ」
「なんだよ、おっさん、もったいないなぁ
じゃあ、俺がおっさんに仕事をあげるよ」
そう言うと、少年ふっと立ち上がり、天使に手をかざした
すると、天使の羽がポロっと取れて、天使が光に包まれた
天使は自分の状況が良く分からない。少年をあっけにとられて観ていると
少年は光に包まれ、あっという間に、神の姿になった
神は言った
「天使よ、お前は今から、もう天使ではない
私に代わって神となるのだ」
「私は長く神として存在しすぎたようだ
お前のような心の持ち主こそ、神にふさわしい」
神はそう言うと、ニコッと笑い、姿を消した
その天使は、その瞬間、神になったのである
そして、天国はと言うと、にぎやかで笑いの絶えない場所となった
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